昭和の風林史(昭和四九年一月八日掲載分)

好買い場露呈 警戒人気が強い

えびす天井を警戒して利食い先行。また高値に惚れて新規売りが嵩む。よい傾向と言える。

「寒鯉を見るやうすうすと群なせる 秋桜子」

どこかのパーティーの時に神戸ゴム取引所の駒井長一郎理事長とお酒がおいしくなった時分、本の話が弾んで、理事長は丘浅次郎先生の〝進化と人生〟、〝人類の過去現在及び未来〟、〝猿の群れから共和国まで〟を御推奨なさった。猿の群れから―は大正十五年に発刊された名著で理事長は旧制高等学校時代、この本によって影響をうけるところ大であったそうだ。

ぜひ読みたいと思った。理事長は、今度大阪に来る時に持ってきてあげる約束され、小島商事のパーティーの時に綺麗な包装紙にきっちりと包んで持参された。

大正年代に、きわめて新鮮だった丘浅次郎氏のこの本は、現代でも、まったく新鮮な驚きを受け、お正月の休み中四冊を一気に読んで駒井氏に感謝するのであった。

傘と風呂敷と本は人に貸したら絶対に戻ってこないとよく言われる。筆者は、だから人に本だけは絶対に貸さないことにしている。また、人から本を借りる時には必ず借用書を入れる。駒井理事長にも借用書を書いた。お約束は今月中に返済する事である。

この本を御返済にあがりゴム取の小西圭介氏や林慶一郎氏と三の宮のガード下あたりで御慶の一盞を傾けるのが楽しみである。

さて、この原稿を書いたらすぐ新幹線に飛び乗って上京しなければならない。また一年、三日に一度の割りで一年百回、東京だ、名古屋だ、九州だ―と出張が重なる。

相場のほうは利食いが出て甘い。

一気に暴走するよりはえびす天井を警戒して押し目を構成するほうが、あとの楽しみが大きくなるのだ。

とりあえず当面の目標は一万八千九百円あたり昨年夏(七月13日)の頭を買い切るのは少し先に行って具体的な買い材料が表面化してからであろう。

相場の基調としては買い一貫である。

すべての環境は強気に味方している。

押し目買い、突っ込み買い方針。

市場人気が強気一色から警戒人気に変わる事が望ましい。

●編集部註
株式であれ、商品であれ、古き良き相場の伝統というか、美風が廃れて久しい。ただその風は、お客様側ではなく取引員側に吹いていたと思う。

ご祝儀相場というものは、まだこの時あったのではないか。ただ株のご祝儀は買いだが、商品のご祝儀は売りである。

【昭和四九年一月七日小豆六月限大阪一万七五一〇円・三六〇円安/東京一万七四六〇円・二四〇円安】