昭和の風林史(昭和四八年十二月十一日掲載分)

舵取り難しい 難破は避けよう

小豆は17日の実収高待ち。業界は全般に理性を取り戻そうとしている。市場あっての業界だ。

「炉火しづか汝が心読みかねつ 虚子」

小島商事の本社ビル新築披露パーティーは盛況をきわめたが、話題は、やはり現在の商品市場が、どうなるのだろうか―という、時局についてだれもが憂慮していた。

三木滝蔵氏は『このままの調子でいくと、年内持つかな』という。『君たちもよくない』―と新聞記者に矛先が向かってくる。なにが高い、かにが高い。ストップ高だ―と書くからいけない。人心が動揺し、ひいては他の物価を刺激してしまう。表現を和らげて、ストップ高と書くところを、制限値幅いっぱいに買われた―というふうに配慮しなければ―と。

砂糖やゴムの取引所当局に対する批判も多い。この春は毛糸や生糸市場が大きくゆさぶられた。そしていままた砂糖、ゴム、毛糸、綿糸の各市場が嵐の中にある。

取引所は、証拠金を上げたり、下げたり、また上げて舵取りが難しい。

なにしろ乗船客には売り方と買い方があって、売り方に都合のよいと見られることは買い方にぐあいが悪く「取り舵十度」といえば〝ようそろ〟と返事はこずに「おも舵二十度」と、はね返ってくる。

非情の海に浮かぶ取引所関係者の表情は、まったく冴えない。

さて小豆相場のほうはどうだろうか。

この市場は過去に何回となく坐礁している。

時には叛乱があったり難破したり、舵がまったく利かなくなったりした。

従って船長である理事長も高級士官の専務、常務も嵐には、なれていて、さほど動揺していない。

東京穀取の森川企画室長は『わが業界の法則は安定は回転速度に比例する。いうなら独楽(こま)みたいなものだ。回転速度が、ゆるくなると軸が斜めになり、頭をふりだす。私は東穀を見学する海外の商品取引所の居客さんに東穀参観の記念品に民芸風の独楽など、どうかと思ったこともある』。

そうしたら、横から神戸商大の高橋弘先生が『回転がゆるくなったら鞭で、ビシビシ独楽を叩くのがあるでしょう。ああいうのが、いいかもしれませんね』という。

お二人の話を聞いていてあまりにリアルなので、なにか身につまされる思いがした。

●編集部註
現在、その東穀自体が既になく跡地には億ションが建っていると、一体誰が予想しただろう。

なくなる十年近く前の東穀は何かが変だった。

おみやげ物売り場に、鯉を抱えた金太郎のTシャツが売られていた。

【昭和四八年十二月十日小豆五月限大阪一万六一三〇円・六〇円高/東京一万六一三〇円・一六〇円安】