頭打ちが歴然 買い過ぎた相場
指し過ぎ、打ち過ぎ、買い過ぎ。いずれも必ずとがめが出る。小豆相場は頭を打っている。
「荒波の間近に蒔きし冬菜かな 汀女」
北海道の生産者が、納得のいく値段を眺めて、それでも小豆を売ってこないというのだろうか。
収穫したものは年末が接近するに従い換金しなければならないだろうし、輸送事情が悪いのなら、年末緊急輸送物資に指定してもらってでも輸送出来ない事はない。
幸い消費地には旧穀の在庫が豊富にあるし、消費のほうも伸びていないから、品ガスレという異常事態にはならないが、誰も彼も皆次々と強気になって買うようなら、きっとこの裏目が出るだろう。
国会開催となれば物価高騰に頭をいためている内閣だけに、商品取引所の先物相場について、いつ、なにが飛び出してくるか判らない。
目に余る投機行為に対し制裁を加える事もあり得よう。農林省当局は来月から小豆などの大口委託者を毎月報告するよう各穀取に義務づける。これも一種の物価対策である。
また、十二月発表の小豆収穫高が予想していた以上に大幅な鎌入れ不足だとすれば、もちろん小豆輸入の外貨ワクの繰り上げ発券という手段も採ることが出来る。
市場人気は①鎌入れ不足②輸送難③諸物価高騰④巨大な投機資金―という要因を、さらに拡大して眺めようとする。
しかし、先限一万五千五百円以上には想像もつかないほど大衆筋が買いついた。仕手期待、インフレ期待の買いである。
果たしてそれらの買い玉が利食い出来る水準まで、この相場が上伸するだろうか。野も山も、見渡す限り強気一色という感じである。
年内に産地の小豆が出回らなければ、そっくりそのまま産地の現物は来春に持ち越すわけで、この事は、なにを意味するかといえば先限、先限と、いま行なっている先限集中買いの戦術の挫折が、どこかで必ずくるのである。
ここで小豆の線型は三月限で一万五千百四十円、四月限の六千三十円は完全な頭である。
千五百円幅を急落して、一瞬買い方の心胆を寒からしめたが、強引にこれを反撃してみたものの、やはり三月限の一万五千円、四月限の一万六千円の壁は厚い。
将棋でいえば指し過ぎ、碁でいう打ち過ぎ、今の小豆でいえば買い過ぎで、そのとがめは必ず出る。
●編集部注
この読み通り、間もなく〝とがめ〟が出る。
騰がるために下がる相場があるが、最後の下降5波動目は、まさしく次の暴騰のためにある〝誘い下げ〟の場面である。
【昭和四八年十一月十九日小豆四月限大阪一万五三六〇円・二九〇円安/東京一万五三一〇円・二一〇円安】