昭和の風林史(昭和四八年十一月九日掲載分)

買い方の味方 インフレムード

今年はよく月の十日あたりで相場が変わっている。二カ月の棒上げもそろそろ転換期。

「つゞけさまに嚏(くさめ)して威儀くづれけり 虚子」

七月十一日に今年の高値をつけたときの当先のサヤが約三千五百円。九月十一日、相場が底を打ったときのサヤが約二千二百円。

そして現在全部新穀限月となりながら当先のサヤが約三千円である。

七月、九月の時は当限は旧穀限月、先限は新穀限月であったから、その格差は六百円であるので、実質的に現在は七月高値の時のサヤを上回っている。強気が例によって期先二本を意識して引っ張り上げて値ごろを高めるのに成功している。

さて今年の小豆相場の動きを大きく眺めてみると、三月十日に一万一万六千三百円をつけて反落、四月十四日に一万八百円まで下げ、それから六月九日の一万八千二百三十日まで棒上げしたあと、七千円中心で約一カ月もみ合った。そして一万九千三百七十円の素高値をつけたのが七月十一日。

二万円は手の中という人気の裏目が出て売り一色となり、九千円近くの暴落を演じた。

大阪で先限一万四百八十円となったのが九月十一日、それから今日まで五千五百円幅の上げとなっている。

少し前まではひと相場千円といわれたものだが、相場までがインフレ化したものか、このごろではちょっと動くと五千円幅である。肝玉と資力がないとなかなか近寄れない。

今年の動きをこうして振りかえると不思議に月の十日前後が転機となっている。

現在の上げ相場も戻しだしてからちょうど二カ月。三分の二戻りで一万六千四百円あたりが転換点ではなかろうか。

もっとも強気筋では七月の高値を抜いてみせると豪語しているそうだし、世の中が物不足時代、急ピッチのインフレ時代となって物を握る者が勝ちというムードが濃くなっているので買い方有利の理窟も成り立つわけだが、理窟どおりにゆかぬのが相場である。

物価抑制の叫び声が強いので、保留されている外貨ワクでも繰り上げ発券されたら、すでに香港経由で数千㌧安値で契約されているだけに一転急落場面も考えられる。

あと五百円。しんどいが辛抱する木に花が咲くのたとえ。

●編集部注 
 当時の小豆相場はエクスパンディングフォーメーション第一波のピークを一万六千円を手前につける寸前に来ている。

 そういえばこの月、テレビ東京の前身局「科学テレビ」が、局名を「東京12チャンネル」と変えて再出発している。

【昭和四八年十一月八日小豆四月限大阪一万五七七〇円・二〇〇円高/東京一万五六六〇円・二〇〇円高】