昭和の風林史(昭和四八年十月三十一日掲載分)

金詰まり深刻 換金売り急増へ

新ポの湧いたところは千載一遇の売り場となろう。年末にかけて換金売りが急増するだろう。

「京極の灯にもどり来ぬ紅葉狩 あつ女」

広州交易会における中国側の小豆の商売は、以前と変わりきわめて柔軟である。日本の国内事情を、なにもかも承知の上で、外貨のワクが無ければ無いように、おとなの商売をする。

日本の小豆市場の投機家は、諸物価の値上がり、来年の減反予想、凶作予想、本年産の鎌入れ不足、輸送難と出回り遅れ、倉庫事情の悪さ、インフレ下における換物人気など、目先的な現象と、長期的な見通しで買い気が非常に強いが、農作物が豊作だった中国は外貨獲得のため、日本の投機家が吊り上げている値段に見合った小豆の商談を着々と進めている。

相場がこの水準であればホクレンもタナ上げする必要はない。投機筋が予想するように、供給面の不安が小豆にあるとすれば、商社は輸入契約を積極的に進めなければならず、政府もまた物価対策上、輸入促進の態勢をとらなければなるまい。

百九十万俵にのぼる豊作と、未曾有の消費地在庫。にもかかわらず投機筋の根強い思惑買いで価格はかつて予想も出来ないような高水準にある。

しかも、相場が言わせるのか、人々がそう信じているのか、輸入小豆が入らぬから昨年とほぼ同様の供給量になる。従って二万円の相場は必至だ―という論法がまかり通っている。

この考え方の基本をなすものは来年の減反(予想)と凶作(予想)の二本の柱に諸物価高時代というバック・ミュージックから成り立っている。

投機市場に千載一遇のチャンスを求めるスペキュレーターとしては、もとよりこれを見逃がす手はなかろうが、公益会の商談は進み、ホクレンのタナ上げは中止になり、産地の現物は年末にかけて急拠換金売りに出てくれば、金融市場のかつてない逼迫などから先高見越しの手持ち現物は年末にかけて先物市場で現金化されることは目に見えている。

商品取引所は金融の場所としての機能があある。大量の現物をすみやかに現金にするのは取引所をおいてほかにない。

おいおいと金詰まりは深刻になってくるだろう。いつまでも上ばかり見ていると足もとをすくわれよう。新ポの噴き値は狙い場だ。

●編集部註
間もなく売り方の心を折りし上げと、やはり売りかと地団駄踏み、再度売り勝負を仕掛けたくなる下げが続けて来る。

【昭和四八年十月三十日小豆三月限大阪一万四七〇〇円・二四〇円高/一万四六二〇円・二七〇円高】