昭和の風林史(昭和四八年十月二二日掲載分)

マリファナ相場 まさにサイケ調

サイケ調のマリファナの幻覚相場である。筆者は好みに合わないから強気などしない。

「残菊に北山しぐれほしいまま い花」

カネツ商事の加藤忠三専務(北海道穀取協会会長)は北海道のカネツの大手顧客について『相場の上手な人で資力も太い。

企業法人であるから会社定款を変更して相場も出来るようになっている。現物事情にも精通している。小豆の目立つ売り玉が狙われていると市場で噂されているようだが、そんな事はないと思う。今年の小豆相場で、あの大暴落を九千円幅取ったあと、三千円幅また買いで利食いして、それも大きな玉だから一万二千円替えという事になる。根は強気なんだ。少し起用をしすぎたみたいだが、現物を集める事も、ゆっくり出来るし、あわててはいないでしょう』―。

穀物市場は強気一色に塗り潰された感じがする。大勢二万円。目先二万五千五百円という声が聞かれる。鎌入れ不足だし、輸入が出来ないから総供給量は去年と変わらない―という計算もされている。

ケイ線筋も強烈な強気に転換している。戻り新値抜けを力強く思うのである。当面踏み上げで、先限の五千五百円は必至という見方。

確かに勢いのある相場だし、若さがある。大量在庫など、まったく気にしないところなど、無気味といえよう。

まして、豊作という頭があるだけに、なまじ相場を知っていると売りたくなる。相場は売れば売るほど高くなるもので、売りたくなる材料がぶら下がっているものだから始末に悪い。

本当は、逆らってはいけないのである。勢いのある若い相場は―。

しかし、筆者は強気をしない。

理くつに合っているから相場は高いのであるが、理くつに合っていないと思う。

いわば流行である。人気である。マリファナの幻覚症状である。

サイケデリックな相場だと思う。筆者はサイケ調を好まない。マリファナの幻覚も好まない。

サイケ調にはサイケ調の魅力があるし、マリファナにはマリファナのよさがあるのだろう。それを好む人は好めばよいので自由である。筆者は好みに合わないから強気しないだけである。

相場が当たる、当たらん―などどうでもよい事だ。高くなれば安くなるのだ。

●編集部注
 風林火山節炸裂の結びである。この時四十代。
 現在、BS放送でこの時代の刑事コロンボを再放送している。サイケ趣味が市井の日常のあちこちに同化していて驚いた。 

【昭和四八年十月十九日小豆三月限大阪一万四〇六〇円・一二〇円高/東京一万四〇四〇円・一一〇円高】