昭和の風林史(昭和五十年二月三日掲載分)

七月限嬶質買い 五千丁利が乗る

七月限の小豆、手亡買いは、この限月が前に回る時を思うと五千丁替えの利益を手にしたようなもの。

「地の底にあるもろもろや春を待つ たかし」

怖いもの見たさという言葉もあるように相場も怖い動きをする手亡のほうに人気が集まる。

一月28日の叩き込みを瞬間的安値としての斬り返しは、まさに天災期における動きにも似た激しさであった。

人気が集中している証拠である。

一万四千円乗せから四千七百円あたりまでは、これは安値を売った反動。即ち孫子兵法でいう勢いである。

〝勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは善の善なるものに非ざるなり。戦い勝って天下善しと曰うは善の善なるものに非ず。故に秋豪を挙ぐるは多力となさず。日月を見るは明目となさず。雷霆を聞くは聡耳となさず。いにしえの所謂善く戦う者は勝ちやすきに勝つなり〟―。

悪戦苦闘して勝ったり、世の人々がほめたたえるような勝ち方は、善の善ではない。本当の勝ちは楽に勝つことで、兵法家はそういう勝ち方をしなければ意味がない。

手亡の一万三千円どころ。これを買えば下値の心配はない。そして千円幅は楽に取れる。こういうところを買わなければ相場する資格はないのである。

そこで、これからの動きであるが、先限七月限が一万四千七百円を抜くと二、三月大波乱相場の幕開けだ。

六月限の四千五百円抜けは踏みも出ようし利食いもはいろう。そこで三百円押しがあって、その押しを、はね返してくれば、もう千丁の上値、六月限で一万五千四、五百円があるはずだ。

人気の動向から言って、手亡相場は五千円台に乗せてからが本来の穀物相場らしい動きをするのだ。

小豆はどうか。一月17日の高値を31日抜いたことは、重要なことからである。押し目幅六百円の倍返し(六月限で)一万七千八百九十円。

もとより七月限の八千円抜けである。

先限で七千八百円を抜くと、これは去年の八月20日以来の高値になる。

二月というこの月に、早くもそのような動きに走れば、大投機時代の到来で人人が考えもしない凄い相場になるだろう。七月限買いは勝ちやすきに勝つ方法だ。

●編集部註
 文中に孫子の兵法が登場するが、昭和五十年二月といえば、司馬遼太郎が昭和四八年から読売新聞で連載をしていた小説「播磨灘物語」が大団円を迎えた月でもある。 

 戦国時代の名軍師、黒田官兵衛の生涯を描いたこの小説は、同年六月に書籍化されるとたちまちベストセラーとなった。

【昭和五十年二月一日・休場】