昭和の風林史(昭和四九年十二月十二日掲載分)

市場芒芒たり 精気まさになく

師走押し詰まらんとして八極を眺むれば芒芒たり。芒芒たるゆえん奈辺にありや。

「灰までも赤き炭団の火を堀りし 虚子」

雑誌〝宝石〟の一月号に大平正芳氏に関する兜町の三木証券の事が書かれ、商品相場の三木商事にもふれていた。三木商事は

大平さんが関係する店であることは、業界で知らない人はいない。

大平さんは常に店の者におかしな紛議だけは起こさないよう注意を与えているそうだ。

今までのところ、三木商事が、政治資金捻出にからんで、相場の思惑をしたという話を聞かないから、三木証券も三木商事も営業

の姿勢について、世間から、とやかく言われる筋合いはないだろう。

同じ雑誌に天野憲治氏が夜の銀座の内幕を書いている。

筆者は、夜の銀座に、まったく縁がないから知らないが、業界人の誰はどの店によく行くという店の名前だけは聞きおぼえがある。

ところが天野氏による超々Aクラスの店の名前を見てびっくりこいた。ロスチャイルド、姫、ジュン、ヴェルサイユ、花、花の園。これらはすべて業界人の行きつけの店だ。超Aクラスといわれるザザ、デ・ロア、クララ、シルクロード、サントモーレ、順子なども業界人ご贔屓の店である。いや、わが業界人はたいしたものだと思った。

ところで11日六本木の〝キャラバンサライ〟で協栄物産OB会数十名が忘年の会(抱念の会)を行った。

協栄の太田社長や広の西村社長を招待すればよかったのに、と思うのは、協栄OB会の性格を知らないからであろう。

恐らく造成中のゴルフ場の会員権30口、50口を担保にとって毛糸相場の思惑をさせる話などに花が咲いたことであろう。

相場が閑だと書くことが一杯あって困る。

相場のほうはチンタラ、チンタラ閑すぎる。

年内、もう諦めの境なのかもしれない。

17日の農林省発表推定実収高が九月一日予想より増大するのではないかというおびえもある。

しかし三月限小豆の一万五千五百円あたり、四・五月限の一万六千五百円どころは、越年玉の仕込み場と見ることに変化はない。

ともかく、あなた任せだ。

長年、相場記者をやってきてこのような師走相場は見たことがない。

●編集部注
 吉行淳之介や神吉拓郎の著述を読んだ事のある方なら、ここで登場する銀座の名を一つや二つはご存知かも知れない。
 
当時の相場街人形町、兜町、八丁堀から銀座までは目と鼻の先。行くなという方が無理だろう。

【昭和四九年十二月十一日小豆五月限大阪一万六八〇〇円・二五〇円安/東京一万六八二〇円・二〇〇円安】