おののく手亡 落ち着きを待つ
手亡の失神相場で市場は暗澹としている。去年の小豆チンタラ九千円崩しにも匹敵する惨状だ。
「鍋焼の火のちる濠や本願寺 菊太」
手亡相場は暗澹たるものである。
昔から、なにが難しいと言って、手亡の相場ほど怖いものはないと言われる。
穀物取引所に大手亡豆が上場されて以来、あたまの仕手が、この手亡相場に挑戦したが、その結末は勝利を得ることなく、読んで字の通り大手を亡ぼす豆に終わっている。
アメリカ産ミシガンピービーンズの圧迫に加えてカナダ産ピービーンズの輸入を心配して手亡相場はおののいてしまった。
思えば東京七月26日(金)一万九千五百六十円。大阪27日一万九千五百二十円を12月限(先限時代)が付け、未曾有の高値の大天井を打って以来、この12月限が一万一千八百二十円まで実に七千七百円幅の惨落である。
その下げ幅は、天井値段の四割に当たる。
高下とも五分一割に従いて、二割、三割向かう理と知れ―とか、百年の九十九年の高安は三割高下に向かうが金の湧き出づる泉―などという相場金言も、どこかにふっ飛んでいる。
しかし手亡相場の七千円足という波動転換の習性から見ると、ここからの売り込みも考え物だし、七、八、九、十、十一月と日柄の面も日足90本、実線百十六日を数える。
げに、天井三日底百日を思わせるものがある。
なるほど手亡は下げたあと買いついた。また今現在ピービーンズの圧迫もひどい。人気面も需給面も、お話にならない。
当然戻り売りが言われ、買うべき材料はない。
しかも恐るべきは、この手亡の崩壊が同じ市場の小豆にも影響してくるかもしれないという無気味な不安である。
ベルレエヌの詩ではないが〝げにわれはうらぶれて、ここかしこ、さだめなく―〟である。
この時、穀物相場の投機家は去年の秋のチンタラ小豆九千円崩しを思うのである。あれも凄かった。
そしてその帳尻が、東京では日農、三好、関西では辰巳、多田、淀屋等の経営破綻になって現れた。
現実は、まさしく厳しい。
しかし、投機市場に参加する戦士は希望を捨ててはならない。
いつかは栄光の日も来る。
わが魂を聖地に埋めても起きあがらねばならない。
●編集部注
数カ月前の乱高下が嘘のような小康相場である。
この時期、日本国内ではいろいろと揺れた。
たとえばプロ野球では、巨人の川上哲治が勇退。新監督には引退したばかりの長嶋茂雄が就任する。
【昭和四九年十一月十九日小豆四月限大阪一万六九一〇円・一七〇円高/東京一万六八七〇円・二一〇円高】