飛ばず鳴かず 三年雌伏の格好
売りもならず、買いもならず孫子兵法でいうところの「支形」である。玉の出ぐあいで値がつく。
「薪に割る何の生木ぞ秋深く 羽公」
三年飛ばず鳴かずという言葉が史記にある。他日雄飛する機会を待って雌伏しているが、ひとたび行動を起こすや大活躍することを言う。
雌伏という言葉は後漢書から出ている。しばらく他人の支配に服しているが決して甘んじていないことを言う。
小豆相場を見てると飛ばず鳴かず三年。即ち雌伏の姿に見える。
市場の人気としては、やりきれなさがあるけれど、三猿金泉録で教える〝売買をせかず急がず待つが仁、徳の乗るまで待つも仁〟―という一項目が、実際によく判るような気がする。
これだけ経済環境がよくない時で、しかも新穀出回り期を目前に控えていて、一万六千円が頑強であるところに、相場する人なら、なにかを感じるはずだ。
価格面では、下げ余地がない地点である。
さりとて、今すぐ相場上昇という材料も見あたらぬ。
取り組みの事情を眺めれば、売った人も利食いし、買った人も利食いして今残っている玉は、売り玉も買い玉も、引かされた栄光の玉だけである。
中でも買い玉は、遥かなり我が買い値、わが強気したところ、霞か霧か遠くにありて思うのみである。
さればそれらの玉は日月(じつげつ)の経過を待ちて納会毎に整理していくしかなかろう。ああ我れダンテの鬼才なくバイロンハイネの熱なくも石を抱きて野に伏して…という敗残とも、諦めともいえるムードに包まれたものである。
しばらくは利食いする玉もないので、新しく取り組むところであろう。
相場経験からいえば出来秋の新穀呼び出し相場がひとわたり展開され、ある程度のものが出回って相場も下げて、それから年末相場が繰り広げられるというコースが望ましい。
巧者筋は九月28日の安値、一応あの水準を本年小豆相場の大底と認めてはいるが、もう一度、この近辺まで駄目押しを入れて二番底を構成し、それからの相場でないかと見ているが、消費地の一万五千五百円は農家手取りの一万三千五百円で、少なくとも手取り一万五千五百円以上で売りたいという生産者の希望値段から離れすぎて問題にならない。
●編集部注
実際、駄目押しは来る。
記事にもある通り、生産地相場なのに、生産者の思惑と実勢相場のかい離が指摘されている。建値市場になれない生産地相場に未来はない。
【昭和四九年十月十四日小豆三月限大阪一万六三〇〇円・一四〇円安/東京一万六五一〇円・一五〇円安】