昭和の風林史(昭和四九年九月二五日掲載分)

秋風落莫凄惨 雨中また涙あり

買い方に、とどめを刺した百六十一万俵という数字は、ついてまわるだろう。索漠たる市場だ。

「見上げ行く葛の絶壁輪島岬 花谷」

小豆の百六十一万俵収穫予想数字は、小豆相場を考える上において、これからいやが応でもついてまわるもので強弱の境界線に大きな楔(くさび)を打ち込んだ格好である。

新穀に、旧穀の在庫量と輸入小豆と府県産小豆等を加えて、年間予想消費量を差し引くと、来年の十月は七十万俵の繰り越し量になるだろうという計算が成り立つ。

七十万俵といえば、昨年十月の繰り越し在庫量と同じ数字である。

昨年秋から今年にかけては市場に、まだ過剰流動性資金が存在していた。石油危機、食糧不足、異常気象、インフレ物価高という背景のもと、旺盛な仮需要により、七十万俵の繰り越し在庫量は、それほど圧迫観をもたらさなかった。

ところが、いま、出来秋に、向こう一年も、やはり供給過剰、在庫圧迫が続くであろうという数字を目の前に突きつけられては、ゲンナリする人が多い。

時あたかも未曾有の不況期。金詰まりは厳しく、仮需要の花の咲く季節ではない。

買い方、最後のお願いである降霜も、天は敗者に味方せず、降霜被害を念ずるなど、不都合なる了見といわんばかり。

買い方は、櫛の歯を引く如く投げている。

夏の暑い盛りに建てた玉を秋風と共に処分する。

嗚呼、また我れ破れたり―と。痛憤すれど、やる方なし。勝敗まさしく時の運。

市場人気は、判りやすい相場と見ている。

戻れば成り行き売り―と。

先限の下値一万五千四百円あたり。

それ以下の値があれば、目先的に小掬いの買い場。

大根時の大根。出盛り期の安値。

なにかの拍子で反発しても一万七千四百円以上安心売り。

ただここで日柄の面で、下げ止まるところ。生産者コストから見て産地は売り急ぎはしない。ホクレンの出荷調整。人手不足による出回り遅れ。鎌入れ不足。相場内部要因の改善。明年の大幅な作付け面積減反と、大冷害の回り年ということを考慮した長期思惑など、強気のよりどころにする灯火(ともしび)はまだ消えてはいない事を知っておくべきだろう。

●編集部註
昭和四十九年九月最終週は、小豆買い方の嘆き節で終わる週となる。

是非に及ばず、それはそれ。次の展開近しと睨み綴るは相場師の勘なり。

実際そうなるのだが、大概その時は金がない。

【昭和四九年九月二四日小豆二月限大阪一万六〇三〇円・三九〇円安/東京一万六一五〇円・三七〇円安】