昭和の風林史(昭和四九年九月九日掲載分)

総弱気市場で 時限装置時刻む

小豆市場は時限爆弾を天にセットしているようなものだ。総弱気市場で時限装置は時を刻んでいる。

「実をつけてかなしき程の小草かな 虚子」

繊維中心の老舗商社伊藤萬がおかしいという噂は早くから繊維業界に流れていたが六日後場引け前、北浜で伊藤萬危うしの噂がドッとひろがり黒い銘柄ミサワ、永大等もむし返され全般市況を暗くした。

商品市場のほうも綿糸、毛糸続落、大正九年の大不況に匹敵する経済恐慌を唱える向きもある。

小豆相場も輸入中国小豆の低価格を嫌気され、また金融不安や仮需要減退など、暗い面ばかりがおもてにあって買い方の投げが嵩み水準を大幅に下げた。

人々は恐慌毛糸相場を小豆に連想する。パニックは値があって値がないようなものだ。

そういう目で穀物相場を眺めれば、売り余地充分といえるのかもしれない。

日本全体にかぶさっている大不況も、先行き光明が見えているわけだが、あともう少しというところがなにごとでも一番苦しい。

十一月内閣改造、二月総選挙という政治スケジュールも噂にのぼる。

大阪小豆当先のサヤ二千六百十円。東京は二千三百五十円。一時(七月23日)三千三百円に開いた当先のサヤが千円もちぢまっている。まずこのあたりが限界であろう。

市場人気のほうも加速度を加えて軟化している。

在庫七十万俵。低価格の輸入小豆の圧力。新穀の出回りという供給圧迫。

実需の低調。仮需要減そして内部要因面としては仕手筋の未整理因果玉のモタレなど、確かに見渡す限り状況はよくない。

しかし、ここにただ一つ残されている相場的材料は天候相場最後の霜害。長雨。立枯れ病。台風被害だ。

収穫予想百四十五万俵にしても、大幅に減少することはあっても、これ以上ふえることのないピークの予想数字である。

そして人々は、悪い悪いで気分的にも暗くなり総悲観、総弱気、それはまさしく昨年と同じようなコースを辿って知らず知らず安値を売り込むことになる。

休日明けは、もう一段安に崩れるかもしれないが、生産者コスト、輸送費諸物価等の比較感から見ても、これ以下の値段には強い抵抗があるはずだ。

そして時限爆弾みたいな産地の冷え込みが怖い。

●編集部註
 伊藤萬よりイトマンと書いた方が馴染みがある。 

 オイルショックで破綻寸前であったこの会社にメインバンクは自行の常務を社長に送り込み、繊維商社から総合商社に転換。見事再建に成功する。 

 まさかその人物が、バブル期に戦後最大の不正経理事件を起こし、経営破綻の原因を作るとは、この当時は誰も知らない。

【昭和四九年九月七日・休場】