昭和の風林史(昭和五九年三月五日掲載分)

春の突風の如き為替変動

ドルは下がらないという政府筋の見通しの裏をかいた。相場の難かしさきわまれり。

雛節句の三日は円相場急伸の突風に見舞われ、ゴム、粗糖が売られた。

長らくボックス圏の円相場久しぶりの変動だ。

欧州通貨が売られ過ぎたあと底入れ感→反発。円の割安感。見直し買い。

ゆれ動くドル相場は貴金属市場に兆候が早くから出ていた。

米国高金利―ドル高基調から、再び通貨変動のシーズンに入るのだろうか。

東京金は為替(円高)分を売られたが、あと小反発。シルバーは円高に響かず逆に買われた。

中東情勢の混昏→原油高傾向→債務国に対するカントリー・リスク→通貨不安→インフレ再燃の心配→金利商品から貴金属へ→世界の天候不順→コモディティへの資金移動という図式が展開されるかどうか。

さて東京シルバーは立ち会い回数の増加で売買回転が速くなりだした。

相場水準の上昇に伴う取り組みの増大は前途に大相場を暗示するものである。

輸入大豆はシカゴの素晴しい底値脱出を横目で眺め円高分を売られた。

シカゴは、どこでもう一度押し目を入れるか。

シカゴにとって欧州通貨に対するドル安は、ヨーロッパの購買力を高めるから大豆の好材料である。

シカゴ罫線は暮の戻り頭からの下げに対して半値以上の戻しかただ。

線の勢いから見ると七㌦80あたりから、少しきつい押し目を入れそうだ。

乾繭は前乾先限五百円をタッチして押し目を入れている。なかなか一本調子の波動に乗らない。伸びると見せて押し、押すかと見せて反発。思春期の少女の如くナーバスな相場展開で神経が疲れる。

●編集部註
 ここで採り上げられている〝中東情勢の混沌〟は、恐らくイラン・イラク戦争の事を指している。
 世界史上でこの戦争は1980年9月に始まり、1988年8月に終わった事になっている。この年はちょうど戦争の真ん中あたり、歴史年表を開くと82年にシリア占領下のレバノンにイスラエル軍が侵攻したり、同じ年には英国がフォークランド紛争を起こしていたり、翌年になると米国がグレナダに侵攻したり、もう一つの大国ソ連も79年末のアフガン侵攻が泥沼化。米国がベトナム戦争で味わった苦難の道を歩むなど世界各地で紛争が勃発。そんな中、イラン・イラク戦争自体は沈静化に向かうかに見えた。事実、この年の2月に米国は撤退を開始している。
 しかし、3月になるとイラク側が戦闘で毒ガスなどの化学兵器を使用した事が国連の調査で発覚。これを機に再度戦争が激化。両国間の都市がミサイルで攻撃されている。