昭和の風林史(昭和五九年二月六日掲載分)

小豆は下げのシグナルが

小豆(先三本)は下げ時代に入った。押し目買いで買うほど下が深くなるだろう。

虎視眈々と狙っているのは小豆の売りである。

口には出さないが、下げのコースに入ったら(1)早い、(2)大幅(3)判りやすい。故に勝負をかけてくる人が多い

銀もゴムも、乾繭も、輸大も、それなりに妙味は尽きないが、やはり小豆相場を知っている人は、手ぐすね引いている。

確かに『もう、小豆の時代でない』とは言うが天井を見つければ、そこは相場する人。これを見逃す手はない―となる。

証拠金大幅アップの期近限月は関知せず。二番限もまだ供給不安が残って買い方の制空権化にある。

従って五、六、七の先三本限月の売り。

この三本はセミプロクラスが強気になった取り組みで、小豆は(1)自由化遠のいた。(2)臨時枠出ない。(3)次期枠早期発券も、枠拡大もないようだ。(4)中国産天津の売り物少ない。(5)春の需要期に入る。(6)二月も渡し物が読める―等々、まだまだこの相場の上は大きいと見るようになった。

しかし、(1)取り組みが細った。(2)煎れ出尽くしてエネルギー燃焼。(3)総強気で高値買いつき。(4)買い方大手の芯が戦線から後退しつつある。(5)北海道から現物移動。(6)逆ザヤ相場(当限引き継ぎ足)の日柄経過。(7)春節明けの北京商談の様子を見る―等、相場環境の変化も感じられる。

さて週間棒は先三本が陰線を引いた。

その前の週から高値もだえしていたものが、これではっきり下げのシグナルが出たと考えるのは当然か。

商いも取り組みも細いし薄いから陽動すれば反発しようが、流れとしては下げ時代に入ったところ。

●編集部註
 「買いは三手待て」というが売りも同様である。得てして専門家は予測が早くなる傾向がある。
 実際、この読みは間違っていなかった。しかし小豆相場の下落が始まるのは4カ月後の6月。それまでに相場はもう一段上がり、売り方は二度死ぬ。
 セ・ラヴィと言ってしまえばそれまでだが、死んでしまった方としてはたまったものではない。ルサンチマンは相場自体に向かう。かくして投機の現場から一人、二人と減り始め、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」となる。
 もうこの時分、中国産小豆の動向を横目に見なければ国内相場の変動要因を探る事が出来なくな っている。日本の農業や食料自給を考えるなら、ここで農水省が動くべきであった。目先の数字に喰いついたツケを、今の我々は払っている。