昭和の風林史(昭和五八年十一月十八日掲載分)

小豆も崩れたがっていた

半身に構えた強気が多い小豆だが、相場は崩れたがっている。S安もある。

シカゴがあっけらかんと八㌦を割ってトレンドに忠実な相場展開だ。

線で大引値が八㌦割れは実に日足68本の重力を、もう持ちこたえ駄目ですという姿勢。

穀取輸大は強弱地図が塗り変わるところ。辛抱する木が冬枯れで花は春まで咲かない。早く投げた者が投げ当たり。投げ当たりとは投げたあとの下値が深い時にいう。

小豆は当限が崩れたがっていた。

今の小豆当限、十人が十人とも渡し物がない。カラ売りが多い。だから高納会煎れが取れる―と強気ばかりだが、どうだろう、そうは問屋が卸さない。

まあ証拠金の高い当限は触らぬ神にたたりなしで、崩れたがっていることを知っておけば、あとの限月の相場の張り方の役に立つ。

新穀一本の一月限に渡し物があるだろうかという。一限買いが本命という人気。そして今の小豆の常識になっている。

しかしこれとて、さあどうだろう。どなた様が強気でも、渡し物がなかろうと、崩れる時は崩れるのが相場である。

小豆のトレンドは大下げのコースに入っていて言えば、そんな馬鹿なと一笑されようが大局トレンドは三万円割れ→二万八千五百円が先限で予測できる。

強気にすれば逆ザヤに売りなし。前に回せば出世する。カラ売りオール煎れ死にさ―とファンダメンタル頼りの姿勢だが、力で買っても一時的で、相場の疲れと大局トレンド下向きの前には、どうにもならんという時がくる。

線でいうと三、四月限の千円割れから三万二百円どころまでの下げは今宵虎徹は血に飢えたといわんばかりにS安の匂いがほしい下げかたになるかもしれない。相場は相場に聞くべし人に聞くべからず。

●編集部註
 それにしてもこのオヤジ、ノリノリである―。
 ひと昔前のネットスラングである。「オヤジ」「ノリノリ」の部分がその都度変えられ、色々な所でこのフレーズが出現した。仮に今回のような記事がネット成長期の中頃あたりに出回っていたら、恐らくこのフレーズがニフティサーブやミクシイ、2ちゃんねるあたりで飛び交っていただろう。
 1983年にインターネットは存在したが、日本では黎明期も黎明期。2001年宇宙の旅なら、猿が骨を掴んで暴れるシーンの辺り。まだ宇宙シーンにも行っていない。電話回線で慶応大、東工大、東大間でつながったのが日本のインターネットの始まりとされる。1 984年の事だとか。
 それにしても今回の記事のような攻防は端から見て楽しそうである。日本の穀物先物市場が瀕死の白鳥となっている現在、現物を受けるとか渡すとかといった行動が相場展開の転換点や変節点になる事はまずないだろう。
 時折、取引所から早受渡しの結果がFAXで送られてくるが、驚くほど少ない枚数がポツリと書かれて終いである。ネット全盛の昨今、この程度の事をわざわざFAXで送らなくても良いのではないかと訝しむレベルだ。