昭和の風林史(昭和五八年八月五日掲載分)

伝家の宝刀抜くまでが花

シカゴの罫線はまるで小豆と同じタイプ。輸大の六千円抜け速く、小豆は五千円へ。

小豆の予備枠緊急発券という物理的精神的上値圧迫感があるから誰もが用心している。

しかし相場がおとなしければその必要はないのだから安ければ買い場をつくる。

お役所が三万五千円以上は緊急発券するかもしれないという市場での憶測は、安値を売ったホクレンや農協筋に対する配慮や政治的含みなどもあるかもしれないが、相場がなにかの物音で暴走した時、これは売り方の踏み上げだから三万五千円噴き抜けてしまうのも仕方ない。

それが瞬間風速三万五千五百円かもしれない。

その時、役所が抜けば玉散る宝刀抜いたとする。

この場合、抜くぞ抜くぞはいいけれど、抜いたらしまいという話。

なぜなら五千五百円あたりから千五百円も押せば、冷静になった人が次々ファンダメンタルを考えて凶作に変わりないのだし、新たな需給バランスを基にして当然買われる。

役所としても相場がその時下げてくれれば顔が立つというわけだ。

五千円に乗せてから千円押すのか千五百円押すかは判らないが、次は押した幅の三倍返しの相場展開で、例えば五千五百円から千五百円押しは三万四千円。

三万四千円に押した幅千五百円の三倍返しだと三万八千五百円。

もちろんこの時のエネルギーは予備枠発動で売り込んだ玉が火だるまになって踏み上げる。また現物面からと、大凶作決定的という認識。そして台湾、中国の値上げなどが絡もう。

以上のストーリーからいえば緊急発券は花火上げて歓迎。相場の世界は知ったらしまいだから、鬼でも蛇(じゃ)でも、とにかく早く出してしまって、さあそれから三万八千円抜けである。

●編集部註
 これも一種のアノマリーなのか。8月は相場の節目となるい高安値をつける事が少なくない。
 この時の小豆相場も8月がピークであった。今現在は日経平均株価が安値を指向。昨年8月は金相場が安値をつけた。
 一寸先は闇―という言葉は、まさに全ての相場に、その相場を手掛ける相場師たちのためにある言葉である。卑近な例として、我々は先月末から今月頭にかけて相場の乱高下で嫌と言う程に味わったのではないか。
 一寸先は闇―と言えばこの時期、劇団天井桟敷が解散している。
 唐十郎の状況劇場と並び称され、世界のアートシーンに大きな影響を与えたこの組織も、主宰の寺山修司の死で砂上の楼閣の如く消えていった。