昭和の風林史(昭和五八年六月二十九日掲載分)

七月小豆、輸大共に白熱化

小豆は絶好の買い場を作った。相場はまだ若い。輸入大豆も必ず走り出す。

小豆の三万三千円はひとまず利食い場所とみて、おりる人が多かった。

見えている人は押し目をすかさず買った。

次のコースは三万五千円から六千円目標。

七月相場は北海道の決定的な作潰れがトークされるだろう。

六月中の産地平均気温を示す赤とブルーの色別に記入するグラフは穀取開所以来見たこともない悪さだ。

天気の方はまた別の高気圧が上の方にある。

十日程前だったか『今のような天気がもう一週間続いたら凶作だ』と言われて以来、よい天気の日は一日もない。

大きな売り建てのある店の取り組みはまだそのままで踏まない。

相場基調は適当に押し目を入れて淡々たるものだ。

過去の凶作の罫線をチェックする。

随分急な上昇のように思えるが日柄からいうとまだ浅い。

手口から言えば、まだまだ売りたい気持を引きずっている。

外割発券に期待する訳だが、過去の例からみても、そのような材料でS安でもしようものなら瞬間的、絶好の買い場でその日のうちにS高切り返しということになる。

外割発券問題はもう少し先にいってからの作業である。また実際に現物が入荷するのは、もっと遠い先のことである。また中国も台湾もいろいろな事情があろうし、値段を吊り上げるのは当然。

いずれにせよ、この小豆は息が長い。

輸入大豆の方はシカゴ急落で押したが、これまた絶好の買い場。

相場は基調の底値脱出のところ。人気が弱い程大きい相場に成長する。

いずれにしろ、来月は小豆、輸入大豆大狂乱。穀取は大出来高の毎日だ。

●編集部註
 実のところ、誰が最初に言ったのかサッパリ思い出せないのだが「神は細部に宿る」のだとか。
 真珠湾攻撃が行われた1941年、名匠溝口健二監督の「元禄忠臣蔵」が公開されたが、この時は当時の建築、歴史、美術の大家の監修の下、刃傷沙汰のあった江戸城松の廊下を丸々造った。
 草月流家元にして映画監督であった勅使河原宏は千利休の映画を撮る際、劇中で使用する茶器や掛け軸、屏風を美術館などから本物を借りて来た。
 端から見れば変わらぬが、トゥーマッチも極めれば狂気となる。映画も相場も、狂ったように隅の隅まで何かにこだわり突き詰めた先に何かがある、という点でどこか似ている気がする。