昭和の風林史(昭和五八年六月一日掲載分)

小豆の先限は買いになる

小豆が言うことをきくようになってきた。精糖の本日は利食い先行となろう。

精糖は規制(臨増)緩和を待つようにしてS高に買われた。丁度先日の押し目幅の倍返しである。

連休明けの海外市況高(予想)の先取りと円安が支援。

いまの精糖はゴムの相場がお手本を見せてくれた。大きな罫線を広げればそれがよく判る。

だからゴムの相場で苦戦した人は、二度と同じ苦しみを味わいたくないから素直に精糖を買って、これがご正解というところ。

国際商品はダイナミックな波動だから、キメ細かな相場テクニックは無用というわけ。

NY砂糖の罫線は、まるでコーヒーカップの受け皿のような底をつくり、これが棒に立ったのだからたまらない。

ともあれ買わなければという熱気である。

ゴムのほうは二四〇円台を固め、先限二六〇円抜けのチャンスをうかがう。

円安傾向が続く限り強い地合いである。

小豆は産地がまた低温。かなり増反され、更に密植ということだが、これからは天候次第。

取り組みも漸増だし、先日の26日安値は、一月底に対しての二番底。

これで10限六千八百円抜けに半値戻しを買い切れば一局の相場になろう。

小豆には小豆のファンというものがあって、夏がくれば軒下に風鈴を吊るして涼をたのしむ如く、新穀11限が建てば、なにはともあれ買い建する。これが相場道奥の細道である。

まして言い尽くせるだけの弱材料を一身に浴びて下げるだけ下げて灰汁も業(ごう)も抜いてきた。

日柄にしてもそれはいえるであろう。

ところで輸入大豆だが新甫から一段安に叩かれるかもしれない。

円安で下げたい相場を支えているが支えきれない。

●編集部註
 6月である。
 この年の6月は、いろいろとピックアップしたい事象があるのだが、ウラディミール・ホロヴィッツが初来日した事を採り上げたい。
 NHKホールで行われた2回のコンサートでは高校生(8000円)からS席(5万円)までが即売。ネット予約が当たり前の今とは訳が違う。また、5~600円も払えば封切館で高校生が映画を観れた時代の800 0円が如何ばかりか。
 この時、ホロヴィッツは御年80歳。晩年に差し掛かっており、その演奏は「ひび割れた骨董」と評され胸を痛めた。これが3年後の再来日につながり、年齢を感じさせぬ音色を響かせたという。