昭和の風林史(昭和五八年二月二五日掲載分)

小豆触れなば落ちん風情

日柄食い過ぎた小豆相場は売りに行くと?まるが触れなば落ちんという風情だった。

小豆相場は農協集荷の管理相場だから、下がるはずがないのに値段が消えるところが、やはり相場は相場である。

産地の現物事情に精通している人達は、二万九千五百円から三万円相場は絶対と信じている。

しかし、相場はくたびれた感じだ。これは節足新値25手。引け足新値8手、日足九段上げという定期相場の日柄食いが、薄商いの相場の上に出ているからだ。

理屈や材料がそうあっても、大衆筋が白らけて無関心では人気にならん。

玄人筋が皆強気で、上に行かんならん相場でも腹一杯買っては、回転が止まり?まった玉が泣きだす。

実需がそっぽを向いている時に、値段を吊っても、それはホクレンや農協の思い上がりで、実需筋は買わない権利を行使する。

マバラ大衆二枚三枚、二枚三枚の売り集団も煎れない権利を持っている。

『16日のあの高値の日足線は、放れ星、捨て子ですね』とご婦人の投機家から電話があって、ほほう、相当のプロだなと感心した。

要するに薄商いを鳥なき里のコウモリみたいに、A店で買い煽りB店で売り抜けて小さな小さな煎れを取ろうとするスキャルパーの手の内をセリを聞いている人は皆知っていて、知らぬは先生ばかりだから困る。

小豆には近寄るなと書いたら東穀協会事務局の町田さん『それはないでしょう』と。確かに、それはないのです。大穀協会乙部さんが小豆市場振興の切り餅入りトモエのぜんざい2分でOKを三袋くれた。

セールス二千人五コの計算一万コ百万円を配給して、小豆市場の振興にかける心意気を感じ、小豆の記事も精を出さねばならない。

さりとてこの小豆を買えとはいえない。どちらかと申せば、触れなば落ちんが如き風情。

●編集部註
 この当時の相場とそれを巡る攻防戦を、活字プロレスならぬ〝活字取引〟で風林火山がせっかく熱く語ってくれているのに、「切り餅入りトモエのぜんざい2分でOK」の方が物凄く気になるのは、これを書いているのがお昼直前であるという事と、筆者自身の食い意地が張っているためである。
 恐らく江戸の昔からある〝懐中汁粉〟の類であろう。これは熱湯を注ぎ汁粉にする最中のようなもので、老舗和菓子屋では今も定番商品である。
 しかし、ネットで色々調べても、ぜんざいの作り方や甘味処が羅列されるばかり―。もう、会社自体がないのだろう。