昭和の風林史(昭和五七年十二月二二日掲載分)

ペルー沖海面水温異常上昇

怪物エル・ニーニョが出現

小豆は利食い圏内。底入れだが大きくならん。輸大が大相場の前夜だ。先限買い。

エル・ニーニョという怪物が今年の夏頃からペルー沖に出現している。

昭和47年、このエル・ニーニョが東穀輸入大豆二千九百八十九円を五千九百十一円まで棒に立て、遂に立会停止にした。

折りから田中内閣の狂乱物価とオイルショック。

シカゴ大豆は3㌦32から12㌦14まで火を噴いた。

すでにペルー沖海温は高くアンチョビーは不漁である。

またブラジル最大の大豆生産州リオグランデ・ド・スルは天候が悪く作付けが遅れている。

シカゴがWボトムの大底入れ。これが来年の作付け減反やPIK(現物弁済)などを支援材料にして、投機人気が燃えてくると期近の6㌦台乗せから様相が急変するだろう。

穀取輸大の六千円相場。ピン(一枚)で50万円取れる―と書いたら、夢のような話と笑うが、いや来年春から初夏の相場を言うのであって年内の事でない。

四千円以下の大豆なら、中国が売ろうと、商社が弱気だろうと、買っておかなければならない。

小豆は三市場とも結構渡し物がある。

市場人気は、渡し物不足で暴騰納会を言うが、受け手があるだろうか。

筆者は底入れした小豆と見るから弱気ではないが、九千円を強気する時期とも思わん。

七千五、七百円の小豆を買っておけば銭になるということで、現に利になった。だから八千八百円あたりまずまずよいところと、欲を出さぬがよい。

読者から、どうも歯切れがよくない書きかただといわれるが、手抜いて千円幅取ったら結構結構という相場であるし、年の暮である。利食い金は、そっくり輸大の先限買いにあてるのがご正解だろう。小豆高値飛びつきは苦労する。

●編集部註
 つくづく相場修業は人生修行であると感じる。
 エルニーニョ現象という言葉が人口に膾炙するよりも先に相場師たちはこの現象を自家薬籠のものとしている印象がある。
 小説「赤いダイヤ」で主人公は小豆の買い本尊と海で出会っている。
 海岸でふんどし一丁で海に入り、身体で海水の温度を確認。「よし!」と叫んで運転手付の豪華な車に乗って帰るのだ。
 昔の相場師ほど海水の温度に敏感である。特に小豆相場は海水の温度を分析する特殊なチャートが存在し、筆者も昔会社で書かされた記憶がある。