昭和の風林史(昭和五七年十二月十四日掲載分)

輸大も小豆も下値に抵抗

魔女狩りは終わった。稼がなければ正月目の前にきている。相場は底値である。

先週末の三市場小豆の出来高合計が千四百四枚とは情けないほどの閑散である。

東穀の三取引員に対する処分が余りにも厳しかったと受けとる業界のショックが数字の上に出ていた。

昔は委託者紛議で、よくよく悪質とされても営業停止処分一、二日だった。

今回のそれは、東穀七月名誉失墜の挽回策とはいえ、名古屋系二社と業界政治力のほとんどなくなった、いわば“弱い店”一社を血祭にあげ、これで「東穀の魔女狩り」は終わった。

そこのところに東穀の計算があることを、読みきれないと、今回の処分問題は、割り切れぬものが残るだろう。

『始めに(五月、六月)異常ない(小豆取り組み)誤認ありき』。『中段に違約、解け合いありき』。『後段に、六本木訴訟問題ありき』。なにしろ開所30周年記念式典までふっ飛ばしたのである。内政の失敗を魔女狩りに転嫁して人心を統一させる。これ即ち取引所運営の妙。権威回復の術。

業者は静謐(せいひつ)をむねとするわけだ。

では、このことが相場にどのような影響をもたらすか?読者は、そのほうに関心を持つ。

だいたいT社に絡んだ問題は山を越したとみる。それは役所が国会の場で答弁できるものが、もう揃ったからだ。先物市場の機能だとか、業界のルールなどというものは二の次。要するに国会向けのものである。

だから、犠牲の羊になった15社は、お気の毒でしたとしか言いようはない。

あとは『稼がなくちゃ』である。

小豆も輸大も弱気が多い割りに下値は堅い。

輸大の三千八百円以下、小豆の二万八千円以下、売って取ろうという考えが病気である。あとから気がつく相場の大底。

●編集部註
 先般も述べたが、通常、大納会が近づくにつれ相場は換算気味になる。ましてや欧米市場は大晦日よりもクリスマスに休みの重点を置くので世界的にこの時期は動かない。
 むしろ、クリスマスが終わってから欧米は動き出すわけで、実際この頃のドル/円相場は急速な円高が12月に入って暫く保合い、クリスマスが過ぎてから更にもう一段円高に向かっていた。
 今回の文章も、この年の相場を振り返り、視点は次の節目に向かっている。一段の円高のような波乱、所謂゛魔坂〟の相場など起きるとは思っていないような文体になっている点に注目したい。