昭和の風林史(昭和五七年八月五日掲載分)

相場が様子を見ています

上げ賛成人気だから腹五分あたりで先まわりの売りが出る。当面下も深くない。

小豆相場は気分の割りに伸びないが、上もそうなら下も気分の割りに深くない。

安い節に商いが比較的できる(手口が大きくなる)ところを売っても駄目だ。

逆に反発して強く見える節で手口が比較的大きくなったところ、例えば多分明日(6日)あたりを買ったりすると、あと嫌な思いをする。

これは、相場が産地の天候の推移と、人の気持(人気)の流れ、そして現物手持ち筋の思惑をナーバスに思惑しているからで、人間様が相場を思惑しているように見えて実は、相場様が人間の気持の手応えをはかっている。

確かにこれからの産地天候次第で先限の三万二千円があるかもしれないし、11・12限の千二百円なしとしない怖さはあるが、左程天気が悪くなければ、月の中頃あたりから平年作~九分作相場の上に、ファンダメンタルズ(需給要因)がのしかかる。

その頃までに芯の確りした強力な買い方が出現すればよいが、静岡筋あたりは、どうも小豆の水が性に相わないようで、あの手が買うと、なんだか嫌だ。

11・12限が27、28、29、3日と頭が揃って罫線が格好良くないのが気になってしょうがない。

あそこで上昇エネルギーが燃焼しては、この相場たいしたことはない。

行くなら押しを入れてすぐ七月12日の線に食い込まなければ、リズムが狂う。

相場はテンポであり、リズムでもある。

要するに現物手持ち筋が、売りたい強気であるから売りたい水準の腹八分と言いたいが、腹半分あたりで先回りの売りが出る。

この事は、もし、ヘッジできる値にとどけば、相場は、もっと上があると思わねばならん。その辺のことを考えれば判る。

●編集部註
 確かにこの相場、もう少し上がある。しかし、そこから買い方は修羅の道に進む事になる。
 わかっちゃいるけど、やめられない―という言葉は植木等主演の映画に端を発した言葉だが、硬軟を問わず、日本人、特に日本の組織論に通底する病巣かも知れない。
 1967年8月に「日本のいちばん長い日」という映画が公開された。これはわかっちゃいるけどやめられない状況を巡るドタバタ劇である。これがヒットして以降、この時期に戦争ものが公開される慣習が続いていた。 この年の8月は、東映が「大日本帝国」という上映時間3時間の大作を公開していた。