昭和の風林史(昭和五七年七月十三日掲載分)

前二本二万六千円も相場

まだまだ油断できないが小豆相場は、大崩れのトレンドに乗って期近からなだれる。

雨がほしい頃になると雨が降る。これはツキである。

産地が豊作ムードに包まれるのも当然だ。

前週末に大阪先三本が「相場と天気は西から崩れますよ」とシグナルを出していた。

まず利食い。いままでに懲りているから、利食い千人力となる。売り方は力をつけて、煽ってきたら盛りのよいところを再度売り直す考え。

買い方は場勘がきつい。大引けで防戦してきたこれまでだが、規制も厳しくなるし、新規増証も、じわじわ響いてくる。

売り方の利食い先行のあとは、買い方の投げが出るだろう。まるで味方の弾でやられる。

ストップ安の二発連続を喰らうと、様相は一気に青田売り、仕手崩れ、日柄の疲労、現物の圧迫となって、期近ほど下げが厳しくなる。

大勢すでに決まる―と判断すれば、今まで耐えに耐えてきた売り方だけに、力もついたことだし、一の力が三倍にも四倍にもなる。

逆に買い方は、三の力が一になるのが負け戦さの特徴である。

それにしても長い戦いであった。まだまだ油断はできないし、相場の敵はむやみに喜ぶな―であるから、とどめを刺すまではなんともいえないまでも、七月限の五千円台のシコリ玉と四千円台のカタマリ玉が追証攻めに耐えられない三千五百円割れ(大阪)になだれてくると、おりから関東は、お盆であるし、15日以降の相場は八限、九限がトレンド崩れで見るも無残。

この場合、八、九、十月限で二月10日頭三万六千円から一万丁下げということになるかもしれない。

●編集部註
 明日は我が身の相場師稼業。〝むやみに喜ぶな〟というのは経験則から来るものであろう。負けた痛みを知る人しか、このセリフは吐けない。
 古今東西、ところどころで上空3000メートルの高みからものを言い、敗者に冷たく、何かあれば札びらを切って物事を動かそうとする増上慢が出現する。このような人物を成金という。
 相場崩落の歴史は成金が自滅する歴史であった。
 彼らだけが地獄に落ちるのならそれはそれでせいせいするのだが、善良な人たちも道連れになるのだからタチが悪い。見切り千両の上が無欲万両というのも肯ける。
 文化面ではこの頃、俳人の水原秋櫻子が88歳で亡くなっている。高浜虚子の弟子にして、正岡子規の孫弟子にあたる。
 何かと風林火山は記事のどこかに句を入れていた。ここから俳句に触れた業界人も少なくない。