昭和の風林史(昭和五七年七月七日掲載分)

『お先に失礼』『待って下さい』

先限がお先に失礼と実勢反映。いずれ期近も、待って下さいと、あとを追うのです。

値は荷を呼んで消費地小豆在庫三十三万五千七百俵。

出庫のうち転送分を引くと実際の消費は六万俵ほどになる。

典型的な実需不振。荷もたれの姿に加えて産地の作柄順調だから先三本は底抜けである。

期近限月は仕手筋の制空権下にあって、まったく別のもの。

買い方は今月も無理を承知で受けざるを得ない。

期近の歯止めをはずせば五千丁は瞬間斬って捨てられ、そのあとは連続ストップ安でなだれ込んで一巻の終わり。
ならば現受けして煎れを取り、現物で損をする分には、すくなくとも持っている現物は半値にもなるまい。

思うのだが買い大手は、えらい深味にはまってしまったと後悔していることだろう。

先三本が下げるほどに期近の逆ザヤが異常さを濃くする。

今となっては言わず語らず常識人は本年平年作以上の作柄ならば仕手後遺症も災いして二万八千円→二万六千円という相場が実現する日がくるとみる。

昔、北浜では〔買い・買い〕になるなと言った。

どうだろう今、自己玉も買い。場づらも買い。現物も持ち。これは危険この上もない。どこかにヘッジをすべきでなかろうか。

天候勝負とはいえ、いまの取り組み内部要因では仮りに天候が崩れても、去年のような相場にならん。

今月も小豆の入荷は結構あるし、納会受ければ受けたで金・倉が嵩むばかり。『どうしようもないね、これでは…』。要するに大局は下げるしかない。

●編集部註
 本来、現物市場のヘッジ機能を担う先物市場の、業界紙記者にして市場識者から〝どこかにヘッジをすべきでなかろうか〟と書かれる皮肉。
 「んなもん、オマエに言われんでもやっとるワイ」と紙面にツッコミを入れる人物もいたのではないか、と罫線を見て思う。
 この時、東京金は既に上場済み。当時の小豆相場と並列で見ると面白い。
 以前も当欄で述べたが、小豆相場はここから崩落の一途を辿る。
 機を見るに敏な投機家は、6月の段階で資金を金相場に移したと推測。実際、東京金は小豆相場崩落と逆相関の線形で上昇基調に入る。
 7月半ばからひと月近く小豆相場は反騰するが、その終了と共に金相場は保合いから再度急騰している点に注目したい。