昭和の風林史(昭和五七年七月六日掲載分)

中段の底抜け秒読み段階

今度は売り警戒人気が強いだけに、アッケラカンと劇的な崩れにつながりそうだ。

産地は快晴続き。気温も上昇。生育好調。

夏型の天候は今週、来週と続く予報だ。

役所のほうも、ようやくあわただしくなった。期近限月の玉をほどく対策は、かなりきつい手段に出るかもしれない。

月曜は共産党機関紙〝赤旗〟が小豆買い占めについてまた書いたそうだ。

農水省は国会で六本木筋の小豆買いが問題になって以来、田沢大臣、渡辺食品流通局長、今大臣秘書官、伊藤商業課長等が市場問題を真剣に検討し、関係取引所に対する指導も、渡辺局長が国会で、はっきりと「異常事態」と明示していることから『異常ないない、打つ手がない』では済まされないという態度。

取引所には〝市場管理要綱〟というものがある。

これが役に立たないようでは意味がない。その点も検討しているようだ。

ともあれ相場としては先二本が〝死に体〟になった。

在庫増、作柄良好、安徽小豆の大量入荷、相場の日柄による疲れ、規制強化。

こうなったらダムは決壊するしかない。

相場は天の理、地の利、時の運という。目下の買い方は、この三要素すべてに背を向けている。

市場はまだ売るのを怖がっている。

前場は早々の利食い。やれやれの利食いが先行した。

戻したら売り直そうというつもりだろうが、売らせずに抜けてしまう相場になってしまった。無理したトガメである。

●編集部註
 平成最後の年の夏、文科省の事務次官候補の呼び声も高かった局長が受託収賄疑惑で逮捕された。
 この報道を受け、ある番組に出演していた社会学者の指摘に膝を打った。
 要約すると、この報道が事実なら、日本の教育を司る省庁のトップになる予定の人が、教育に対して何の哲学や理念もなく、〝こうであるべき〟といった美学もなく、普通に自分の権力や立場を自分の欲望のために使った事になる。それは罪深く、恐ろしい事であると。
 話を昭和の小豆相場に戻そう。この時、異常はあったが違法はなかった。
 ただ、風林火山の筆致と行間からは、管理する側、運営する側の無為無策ぶりは読み取れる。
 そして、平成の今だからこそ言える。先物市場に対して何の哲学や理念もなく、〝こうであるべき〟といった美学もない人たちが市場を管理、運営すると、結果的にロクでもない事になるのだ、と。