昭和の風林史(昭和五七年七月五日掲載分)

無理したトガメ出る時分

無理が、どこまで続くかだけの問題で、それもようやく先が見えてきた。

今週から産地は夏型の天候にはいるようだ。気温が上昇するとともに先三本が売られる。

七、八積み加えて安徽小豆は三千五百㌧に達した。

去年の秋に受け渡しされた安徽小豆が、まだ一万七千俵ほど抱かれたままのようで、纏めて換金しようとすれば一俵一万円以下だろうといわれる。

要するに実需筋はボイラー調整に苦労するから敬遠しているようだ。

一に台湾、二に唐山、三に天津、四に東北、五、六がなくて七に安徽。去年結構売れた東北が、今年は悪い悪いで終わりまで残ろう。

手亡の相場が小豆の先行きを明示している。この手亡という相場、不思議と先行性がある。産地小豆ザラバも落凋涛々。要するにこれが自然の流れである。

農水省商業課の伊藤禮史課長がいわれていた。『歴代商業課長は、ここという要所では泥をかぶってでも行政の毅然たる姿勢を示してきた。君は困った困ったばかりで火の粉をかぶる勇気がない。それじゃ困るんだ』。

伊藤さんは温厚な、お人柄に好感が持てるけれど、〝困ったの伊藤〟じゃ、ほんまに困ると評判だった。

買い主力筋が先のほうを買うのか、買わんのかで、この相場の前途を占うことができる。本当のところはもう降りたい心だと思うが、すんなり降ろしてくれないから困る。

線型は先二本が、本来、あるべき姿にもどろうとしている。週明けは、これが、なだれてくる可能性が濃い。

期近二本のダムも決壊する運命だ。ボックス型保合いの底が抜ければ、商いもようやく弾むことになる。

●編集部註
 暴論かも知れないが、先物相場、とりわけ穀物相場は、当業者の参加が多数あってこそ投機家の投機が価格の平準化につながる。当業者の参加が少なければ、それは上場対象物を使ったただの博打である。
 実際、今回の小豆相場は博打場となり下がった先物市場と現物市場の歪みが露呈した格好になっている。それでも、今に比べれば当業者の入る余地があったから相場も動いていたのだろう。だが、
当業者が去ると、賭場に残るのは眼つきの悪い博打打ちだけになる。
 筋目の悪い賭場に、素人さんや一見さんが寄り付く筈がない。かくして、賭場は廃れ、「ジャンルを滅ぼすのはマニア」「悪貨は良貨を駆逐する」という箴言の典型例がまた一つ、世の中に加わる。