昭和の風林史(昭和五七年七月一日掲載分)

売るべし売るべし先二本

大局的見地で先二本を売っていけば時間が解決してくれよう。相場は疲れている。

中国小豆の成約が進んでいるようだ。七月も三市場千枚の渡し物ができるだろうと早々の予想だった。

産地の低温周期は五、六日頃に終わって本格的夏型の天気に移る。今年の夏期の波動は二週間サイクルである。だから次の気温低下は月末26日頃になる。

北海道小豆が定期、現物とも、ぬるい。やはり作柄に敏感である。

六本木筋は『ブラック金屋筋が相場を叩く以上、対抗上買う。このような玉を受け入れる取引員のモラルを疑う』―と、だいぶご立腹のようだ。金屋筋に近い人に聞くと、売っている玉は二千枚までだろう。市場でいわれるような玉数にはなっていないはず―。

六本木筋という〝怖い人〟から電話がかかってきませんか?と問われる。売り店や、輸入小豆のヘッジャーに怖い電話がかかってくるという話だが、誰か違う人が嫌がらせしているのではなかろうか。相場を弱気して、おどかされるようなら、ますます人気は離れてしまう。

静岡筋が小豆期近を踏んでいた。『生糸買いのめんどうはみるけれど、小豆売りのめんどうまでみられない』ということらしい。それで煎れたとか。

増証を徴収しておいて、なにか効果のある玉ほどきの劇薬が投ぜられる可能性もある。

市場人気は、まったくしらけてしまった。

増証と材料を反映しない人為的操作の相場を嫌気しているが、これでしか飯の食えない人には、なにか嫌な空気だが、11・12限を売っていくしかない気持。

愚痴っていてもはじまらん。相場の大局的な流れさえ摑んでおれば、いつかは、どこかで自然の姿に必らず戻る。目先でなく大局的な見地で取り組むことである。

●編集部註
 小豆相場が崩落するこの時の相場状況を筆者は体験していない。とはいえ、どなたさまかは存じ上げぬが、取引に対して○○筋間で何等かの圧力があるとなるとこれはいただけない。相場の末期と言って良い。
 司馬遼太郎の小説「俄(にわか)」で大阪は堂島の米会所を任侠の方が襲撃してぶち壊す場面があるがこれも末期であった。
 平成に入り、相場に勤しむその筋の方と何人かとお話しする機会があったが、コンプライアンス厳しい時節柄ひたすら目立たないようにしていた印象がある。
 パラジウム相場が崩落する直前、金相場が大底を打つ直前の相場に実際に立ち会った事があるが、寄付きは普段と何ら変わらず、嵐がいきなり吹き荒れた感じがした。