昭和の風林史(昭和五七年六月三日掲載分)

人気が離れるのも当然だ
 
執拗買いに辟易して人気が離れた小豆だが、いつパニックが来てもおかしくない怖さ。
 
小豆市場は異常取り組みの中で買い方は買わないと気が持てんような買いっぷりだし、事実、買いの手を止めると、なだれ現象になりそう。

場勘よりもテコ入れ買いの証拠金が効率がよいわけだが、無制限に買い支えられるわけでもない。
麦と兵隊ではないが、買えど支えど売りまた売りの豆の重さよ値のぬるさ―。
今後のハードルは増反。在庫増。売れ行き不振。入荷順調。規制強化。人気離散。受けた現物の金倉。そして順気→青田ほめとくれば、日柄を食った相場だけにパニック的崩れにつながるだろう。
その時、こんな異常取り組みだけに小豆市場は不測の事態に陥るかもしれない。業界はその事を心配しだした。
天候が、もし悪ければという懸念はあるが、こんな極端な買い過ぎの相場は上には行けない。
一昨年の大狂騰は取り組みが非常に薄く、そして売り過ぎていたから電流(アンペア)メーターの針がヒートした。
昨年は天気があんなに買い方を支援したことは取引所開所来のことで、さらに大幅減反が強烈に響いた。
確かに今は売り方の玉負けである。
商いは薄くなった。人気が離れるのは当然だ。その薄商いの中で執拗に買う。
ウォール街の金言に『執拗は益を受くることなし』とある。孫子兵法は『戦い長びけば兵を鈍らし、鋭をくじく』と戒めている。
良識派はパニック時の市場防衛のために受け皿づくりに苦慮している。
六本木という正体のはっきりしないガリバー的巨大買い方だけに、買い方機関店にしても心痛事だと思うが、その割りに関係取引所は楽天なのか、金(かな)縛りなのか、様子が変だと業界は心配している。

●編集部註
 日足では5月末と6月頭との間にマドが空いてしまった。恐らく売り方は頭を抱えている。
 商いは薄い。得てして天底で商いは膨らむ。それがないという事は、まだまだ反転せずに上昇するのではないかという心理が働く。売り方の心は、存外こんなところで折れやすい。折れる人が多ければ多い場面程、反転ポイントになりやすい。
 そういえばこの頃、宮尾登美子原作の「鬼龍院花子の生涯」を東映が五社英雄監督、仲代達矢、夏目雅子の主演で公開している。夏目雅子の「なめたらいかんぜよ!」というセリフは流行語に。
 実勢相場はここから1カ月の保合い後に崩落するが、差し詰め「売り方をなめたらいかんぜよ!」という心境であったろう。