昭和の風林史(昭和五七年五月十八日掲載分)

相場が勝手に走るのよ

相場が勝手に走りだす。上昇トレンドに乗っているからだ。叩いた分の倍返しへ。

週明けの小豆は買い方もびっくりする騰勢でS高という速い失地回復だった。

陰線三本の叩き込み。これを14日下から掬いあげて週明け夜放れ高してS高は、要するに叩き過ぎの反動。

おまけにWボトムの二点底。売り屋は全部?まって初夏の悪夢だった。

取り組みは安値時(4日)東西合計六万二百枚が六万九千枚にふえている。

これは三月中旬四千五百円当時に見せたボリュームである。

去年もそうだった。下げは短期間。すぐに切れ味のよい上げを展開した。それは上昇トレンドに乗っているからだ。

まして二点底して若い相場だけに叩いた幅の倍返し。四千二百円あたりまでは自律反騰である。

売り方のトークは(1)当限大量買いはもってのほかである。(2)逆ザヤけしからん。(3)六本木の大量買いは建玉違反でないか。(4)これは買い占め、買い煽りだ。

 ―取引所や役所は黙っているのかと、かなり熱い。

確かに強引すぎた。買い方にも反省すべき余地十分だ。しかし、三晶の売りだって、ヘッジなら高いところで静かにやればよい。

あの売りようはヘッジャーではなく相場崩しの叩き屋のやり方だという。

買い方も必死、売り方も必死。相場は勘定と感情の戦いだからエスカレートすれば熱くなる。

買い方は役所や取引所の心証を悪くしては不利だから、自粛すべきだろう。

目には目を、歯には歯をでは市場が破壊される。

そんなに強引にやらなくとも相場は若いし、自律反騰の力もつき、あとは売り屋の踏み上げで高くなるしかないのだから、三千円台の庭の中で少し時間を稼いで世間が相場についてこれるようにしないと、大成することはできない。

●編集部註
 すべてのジャンルはマニアが潰す―。実業家、木谷高明の名言である。
 証券マンであった彼は、退社してベンチャー企業を立ち上げ、今も全国展開しているアニメ、コミック、ゲーム販売店の「ゲーマーズ」を開店させる。その後カードゲームを手掛ける「ブシロード」を設立。同社は後に新日本プロレスのオーナー企業となる。件の明言はこの時生まれる。
 新参者や初心者をその道のマニアが駆逐し、排他的な世界になるケースはどのジャンルにもある。商品先物業界はその典型例であったと言える。
 木谷は当時の若手エースたちと二人三脚で新規ファン開拓に粉骨砕身し、見事業績を回復させる。