昭和の風林史(昭和五七年四月二十二日掲載分)

三山崩れは相場の疲労だ

仕手期待の値頃観買いがこの相場を芯から悪くしていく。富士でいえば八合目だ。

小豆5・6・7・8の限月は先月17日の安値顔合わせで両足つきの格好。

強気は、先月同様月末にかけて反発を期待するが、先月の安値時と違うのは
(1)取り組みが東西合計六万七千九百枚だったものが今は六万三千八百枚と四千枚も減っていること。
(2)取引員自己玉(大阪)が買い五千六百枚・売り二千百枚だったが今は買い四千四百枚・売り二千六百枚。
(3)当先逆ザヤ八百三十円が今三百五十円。
(4)節足新値は当時黒16本。今回も黒16本だが途中で二回赤線を建てたダマシを入れ、節足転換は五千七百円抜け、大引け足なら五千八百二十円抜けと遠い。

更にもっと大きな変化は、あの時はドッと売り込んだが今回は、むしろ買いたい人気。これは仕手期待である。

20日は東西出来高合計久々で一万五千二百枚台。

取り組み減少からみると投げに対しての利食い。ほどけている。

前三本は安値を売って辛抱している玉もあるが、先三本は買い玉オール水つかり。

期近三本あと千丁下があれば辛抱組の顔もほころぶが、そうなると三山崩しで一月以来の高値取り組み玉が、なだれ現象になる。

そのような場面は多分五月に入ってからだと思う。どうせ行く先は判っている。あわてることはない。

買い方は仕手に期待するところ大だが、仕手が踊れる場面は天災期だけである。目下需給相場の舞台では、一の力は一しか評価されない。

更に泣きどころは薄商いである。薄商いだから煽りは利くように思うが誰の見る目も流れが変わっていることを知っているから見え見えの煽りの手には、ズバっと実弾背景の売りものが浴びせられる。進むもならず退くもならぬ買い方だ。

●編集部註
 今と違い、昔は毎日どの会社がどの銘柄を何枚買って何枚売っていたかが公開されていた。昔はどの会社にもこの〝手口〟を記録し、詳細に分析し、相場展望を予測する人がいたが、今はどうだろう。
 この頃は「○○がまだ買ってるから相場は下がらない」とか「◇◇が動き出したから本格相場になる」と言った会話のやり取りは日常茶飯事であった記憶がある。大半は与太噺だが、中には本物も紛れていた。
 この頃は3月に始まったフォークランド紛争で、序盤アルゼンチンにやられた英国が反撃に出た時期と重なる。この紛争と相場を重ね、目先の下降相場が仕手の出動で反転上昇する夢を見た買い方が少なからずいたと思う。