昭和の風林史(昭和五七年四月十五日掲載分)

チンタラ峠をあとにして

売り玉は利食いしたあとが大きい相場になりつつある。利食い先行だけに下が深い。

四月になると軒下で遊ぶ雀の声にも艶がでる。読者からかかってくる電話の声も五千円台の時とは、うって変わった張りを感じる。

本欄三月31日付け『追い証入れるか玉踏むか』、お燗つけよか?床敷こか?テンツルシャンの時は〝売り方失意の時は泰然〟が肝要といわざるを得なかった。

まだまだ売り方、気を緩めるところではないが、五千円台の売り玉は、四千円割れで利食いしたい考え。

相場というものは、利は伸ばせというが、その気でいると利がはげる。

さりとて利食い千人力で早々と食えば、そのあとが大きかったり。

後白河法皇も、お嘆きになったそうだ。ままならぬもの小豆の利食い時。

名のある相場巧者は、ここから三千丁の下げがあると人指し指で罫線の千五百円あたりに円を描いた。

元気のよい若い相場師は、流れ流れて落ち行く先は二万七千五百円―といった。

三万七千円を渇望している強気が多い時に二万七千円とは、天地のへだたり余りに大きい。

しかし相場とは、夢を追っている時と、夢に破れた時しかないとしたもので、それもまた相場。

本当の下げは五月から六月ですよ―と遠いところで線一本研究している人から低い声の電話があった。

あるいはそうかもしれない。五千丁上げて、まだ二千丁下げのところ。すでに半歳を過ぐ。

相場に勝てないもの三ツあり。その1が日柄。その2が政策。そして3が人気である。日柄老境にあり、人気白々と薄れ、買い方大手のみ君臨しますれば、四面物が売れないの声満つ。

先限で千三百円下げてきたのだから五分の一の二百六十円ぐらいの戻りがあってもよいが、それをやるとまた下げに弾みがつく。

●編集部註
 結論から先に書くと、4月頭にこの年の2番天井をつけた小豆相場は、戻りらしい戻りもなく一貫して下げ続け、東京市場では黄金週間明けの5月6日に3万1190円をつけてひと段落する。
 日柄的には、買い方も売り方もこの時が一番ウズウズする時である。
 4月1日の2番天井は、遡る事11営業日前の3月17日から上昇が始まっていた。4月1日から10営業日後の4月14日に3万 4270円まで下落し、翌日にマドを開けて上昇する。短期派の買い方なら、下げの日柄が終わったと見る者が出現してもおかしくはないだろう。
 しかし、そうは問屋が卸さないのだが、これらの情報を頭の中に入れて明日以降お読み戴きたい。