昭和の風林史(昭和五七年三月十八日掲載分)

予想外に悪い相場だった

劇的な下げが先に行って出現しそうな気がしてしょうがない。戻す場所で戻せぬ悪さ。

小豆の現物ザラ場は、先のほうなど売りにいって値が付かない。北海小豆も売りに出せば五万円台なんて宙に浮いた値で四万円以下で買えた―と。
六本木が頼りの強気陣営だが、相場なんてそんなものでない。六本木が支えようと、崩れる時は崩れる。これが逆に六本木が弾切れで投げ出してきたら、買い方抱き合い心中。
誰かが、いまの世の中高いのは、ドルとトルコと小豆だけ―といった。
金が安い。円が安い。株が安い。そのような時に野中の一本杉の小豆にヘッジ売りをかける金持ちもいる。また、証拠金として納入している株の値崩れで定期建玉も影響される。
取り組みは減らない。これはマバラ大衆の利食いに自己玉買いが食われたが、玄人大手筋(例えば六本木などの買いに対する山種の売り)で、むしろふえ気味でさえある。
この、下げながら取り組みが太る現象こそよくないのだ。
一般に三千四、五百円あたりで止まらねば二千七、八百円があるという見方だ。これは、確かに急所を衝いた見方と思う。
では二千七、八百円あたりで買い大手が投げてくればどうなる? これは新たな展開になろう。
強気は彼岸底を期待している。
今週末から来週前半に大下げがあって、出来高急増なら、あるいは彼岸底かもしれない。
そうではなく戻したり、チンタラ安の薄商いでいくようだと、パニックは先に伸びる。
線型は先週の週間棒が支配して、黒い糸がいかにも垂れそうだった。

●編集部註
 小説『赤いダイヤ』でも、山種がモデルになっている敵役は小豆の売り本尊であった。この時の小豆相場でも山種が売りに回っている。兎角玄人には売り屋が多い。
 売りに至るロジックは色々あると思う。その一つに日柄的な要因がある。
 この当時、小豆相場にはどうも5年サイクルが存在しているのではないかという仮定が出来た。
 1962年6月を起点に、1967年12月安値までは65カ月。そこから1972年9月安値までは56カ月。更にそこから1978年1月安値まで64カ月。つまり、全て5年(60カ月)前後の周期で安値が出現している。
 1981年8月の高値は78年1月安値から43カ月目であり、この時(19
82年3月)は50か月目。仮に5年サイクルが有効であれば、とっくに買いの日柄が満ちてしまっているという見方になる。下げ相場にもそれ相応の日柄が必要なのだ。
 ちなみに、78年1月起点の相場は64カ月後の83年5月に安値をつける。