昭和の風林史(昭和五七年二月二十七日掲載分)

下げる時は一発である!!

ファンダメンタリストは理路整然と曲る。という地点にさしかかっているふうである。

相場師は過去を、ふり向かない男であるが社会の仕組み上、窓をあけて突き進んだところは嫌でも埋めにいかなければならない。好運の時、すべからくふり返ってみよ―というのはこの事をいうのだろう。思わぬ伏兵に気が滅入ることかもしれないが、勝海舟は「人間心が萎(な)えたらいかん」と教えている。特に相場社会の人は気の持ちかた一ツで逆境を乗り切ってきた人ばかりだ。

ところで小豆相場は六千円が傘で五千円が下値抵抗なら千円圏内の押したり突いたりだが、これで日柄を食うと下に抜ける。

いまは、定期の期近が玉負けしている。

これは台湾ものは実需に直行するからだ。また、証券をほどいてしまったこともある。従って、前は、買えば素直に上がる。

しかし先のほうは通常発券、大型枠予想などから輸入商社も儲かるうちに成約し、ヘッジしておく。

それと、昨年10月以来、来る月々に五千㌧台の輸入小豆が通関している。

北海小豆の凶作で年間六万㌧の輸入が必要といわれたが、なるほどキチンと月五千㌧。二月も三月も、そして四月もまずこのペースだと、やはり先の限月は重くなる。

更に買い方、時限爆弾は自由化問題。これがスッキリするまで枕を高くして眠れない。

線型は二月10日天井、二月23日戻り天井。そして先月17日の安値を深く切り込んでくるとなだれ現象。

まだあの上値で叩き込んだ強力売り線の週間棒が生きているのである。

商いは薄い。しかし、上昇トレンドに別れを告げようとしている。

●編集部註
 良くも悪くも商品先物取引には取引期限がある。
昨今は無限月取引が出来る銘柄が登場しているのだが、農産品となるとそうはいかない。債券取引が償還期限で価格が変わるように、農産品にも旧穀と新穀とで価格が変わるし、シカゴ市場で最近見られたように倉庫を巡る争奪戦が価格に影響を与える時もある。
 本文で登場する〝証券をほどく〟という言葉は、倉荷証券から恐らく来ている。今も昔も、倉荷証券は株券や国債と同様に充用有価証券として有効であり、貴金属取引は倉荷証券を充用して取引すると、色々と有利に働く印象が筆者にはある。現物保有者は強いのだ。
 残念ながら農産品の倉荷証券を扱った事がないので何とも言えないが、賞味期限がある物だけに、想像を絶する駆け引きが繰り広げられていた事は想像に難くない。