昭和の風林史(昭和五七年一月二十五日掲載分)

寒中閑閑として悲鳴あぐ

閑で閑で悲鳴をあげるまでは駄目なんですかね?と。まだ悲鳴はあがってませんね。

逆ザヤの当限に、かなりの台湾小豆がつながれて、これが納会安ければ親引すればよい。

品物がよいだけに三、四月需要期控えて受け手も出てくるだろう。

先限のほうは三千円割れがあれば買いたい人気が根強く、相場は買いたい値段まで降りてこない。

さりとて今の相場で四千円を買いきるだけの迫力がないから、どっちつかずの呆やりした市況になる。

罫線は三千円と四千円の圏内でM型のトリプルトップ。即ち頭のまるい天井型にも映る。

10月19日と11月19日の安値がWボトムなら、12月16日と1月18日がM型トップ。

このバランスがまだ今のところはとれているけれど、この先日柄がかかって今のようにジグザグ横ばいが続くと、買いたい値(二千八百円)を買わせておいて二千円そこそこまで意地悪な下げを入れるかもしれない。

買い方は買うだけ買って黒板の前で腕組みしている。

四千円を抜くと、すかさずヘッジ売りが嵩む。四千円は難関になっている。

今は強気も弱気もない。相場について、なにを語らんや。

中国の詩人・柳宗元に江雪というのがある。

孤舟蓑笠(さりゅう)の翁独り寒江の雪に釣る―と。

絵になる詩である。雪の中の小舟に蓑笠つけた老人が、うずくまって糸を垂れている。

今の相場は、そんな枯れた風情である。見ている側は釣れてよし、釣れずもよしだが、孤舟の翁の心はいかに。ただただ時節の移りゆくのを待つのみか。相場は忍耐であるという。

●編集部註
 ジョン・J・マーフィーという人が書き、日本でも『先物市場のテクニカル分析』という邦題で出版されている本は今も読み継がれるテクニカル分析の教科書である。奥付を見ると平成2年5月24日に第1刷とあり、筆者の本は第6刷である。

 この本に「コンティニュエーション・パターン」という罫線パターン群がまるまる1章使って解説されている。

 この本のこの章から前年81年10月からの東京小豆相場の日足を見ると、Wボトムというより、同年11月5日の安値を加えたトリプルボトムだろう。

 一方高値は12月、1月と3万4000円で頭を抑えられ平板。これに対し1月の安値は切り上がり。これはアセンディング・トライアングルという上放れ型の相場線形。仮にM型のトップであれば1月中に下げる必要があった。上放れると中段の保合いになる。