昭和の風林史(昭和五四年十二月十日掲載分)

輸大は天井した 円高には勝てない

円高基調が続く以上は輸入商品の下落は必至だ。特に輸大、ゴム、精糖は天井しているから戻り売り。

「眼に残る親の若さよ年の暮 太祇」

今年の5月1日付け『日本経済新聞』12面〝経済教室〟に筑波大学の坂倉省吾教授が円相場について書かれていた。

そしてその予測が見事に的中している。

即ち、円は二百五十円あたりまで下げたあと反騰に転じ、来年にかけて百八十六円まで高くなる―と。

坂倉理論は、システム・ダイナミックス・シミュレーションによる円相場の予測である。

坂倉教授は円相場を動かすメカニズムについて、昨年11月5日の日本経済新聞〝経済教室〟で論文を書かれ、俄然注目された人である。

そして、円安の最大原因が石油にあると見るのは正しくない―としている。

詳しくは、日経縮刷版を御覧になるとよい。

要するに、五月の時点で円は二百五十円まで下げてそれから反騰に転じ、来年の夏頃には一㌦百八十六円あたりまで行く―という予想を重視したい。

昨年11月に教授が予測したケースと、その後の円相場の推移グラフは、まさしくピッタリであるし、本年五月における、その後の相場変動予測も実に見事である。

その限りでは、これからの円高は、二百円割れ→一㌦百八十円台という方向に進むと考えてもよいのではなかろうか。
ともかく注目される貴重な論文である。

週末の輸入大豆は売り玉の利食いが先行した。

高値で買いついた玉はアッという間に引かされ、まだこれの投げはない。

随分安いところの売り玉を辛抱してきた人もいる。

為替が一㌦二百三十円→二十円と、急騰傾向だし、シカゴが、やはり頭重い。ブラジルの作付けも問題なく順調。

要は国内需給であるが、相場の流れというものは、人気が支配するだけに、ひとたび天井を打てば、下げ波動に抵抗出来ない。

とりあえず上げ幅の半値下げ五百円幅の下げと見る。

小豆相場は、北海道の先限で四千円あたりまでは相場を潰したくないみたいだ。

ホクレンあたりは、ヘッジした玉はそのままで、ある程度相場が戻したあたりで再び売るつもりだろう。

農家も安値で仕切ってこない。

しばらくは、円高基調が続くと見て、天井した国際商品を売っていけばよいのではないか。

●編集部註
 神田に芳賀書店という老舗の本屋がある。そこの当代は経営のけの字、経済のけの字も知らぬまま店を継いだという。
 一念発起した当代は、日経新聞の〝経済教室〟を毎朝読んで勉強し、知識を蓄え、持ち前の才覚もあって左前の家業を建て直したのだとか。