昭和の風林史(昭和五四年九月二二日掲載分)

大底はいずこ 豊作相場出さねば

◇…豊作の年には豊作相場が出るものだ。去年もあった。今年もある。先限二千円を割るだろう。

「きちきちや草の乾きの音乾き 寥々」

◇…なんだ小豆は豊作じゃないか―と。

予想とは上下十万俵も違う百七万八千俵の発表を見て、愕然とした人が多かった。

◇…おりから月齢は旧暦八月朔日。彼岸の入りである。

八月七日天井したのが旧暦六月十五日満月・立秋の前夜であった。

月々に月見る月は多けれど―の、名月や座頭の妻の泣く夜かなとうたわれた仲秋の満月は来月五日。

◇…小豆相場は、仲秋名月の頃まであかんかもしれないと思わせた。

◇…北海道小豆が豊作のうえに府県産内地小豆も豊作では、心理的にも買い気が萎(な)える。

そのうえ中国小豆、台湾小豆と、輸入小豆の圧迫は火を見るよりも明らかだ。

◇…咋年は、北海道未曽有の豊作。

豊作には豊作相場を出さなければならない。昨年は九月11日に先限二万三百三十円という安値を付けた。

◇…この相場は、仕手崩れでもあったが、仕手崩れは二万二千円どころで一応止まったけれど、二万円めい台まで、なだれ込んだのは、やはり豊作によるものである。

◇…筆者は、今の小豆は先限二万二千円を割る豊作相場必至と見る。

四千円と五千円のあいだで取り組んだ玉の買いの分が投げにはいってくるのが三千円割れからだ。

◇…売り玉は回転が利いている。じっと我慢の子の買い方と、その勢力比は、月とスッポンである。

◇…ヘッジャーは、安いところで利食いする。この行為は、純粋ヘッジャーなら、必らず戻したところでまた売り繋ぐという、次の思惑が見えている。

◇…『弱気が売り叩けば、底がはいる』。そういう見方をする人もいるが、これは、今の場合、間違った判断だ。なぜなら、売り叩くような売り方はいない。新規は勿論(値頃感で)

こんなところは売れん―と二の足を踏んでいる。

◇…市場は弱気一色というが、それは表面的現象観だ。市場の本心は、むしろ次期ワク削減を予測して、下値警戒である。

◇…それだけに、この相場はズカズカ下げる場面を残している。
いうなれば、ヘッジャー時代である。投機家不在である。いや投機家は存在しているが、因果玉を抱いて塗炭の苦しみをなめている。

このような時に買い目はない。

●編集部註
 豊作に売りなし―。

 筆者が駆け出しの頃、この相場格言の意味が解らなかった。

いまも判っていないかも知れない。
 
ただ、ここから数カ月の相場動向を見ると、何となく判った気になる。