昭和の風林史(昭和五四年九月二五日掲載分)

目先反動戻し 灰汁は抜けたか?

◇…小豆は投げが大分出たから急落の反動で反発する。反発したからと言って大底したかどうか判らん。

「噴煙は遠し萩咲き野菊咲き 左右」

◇…普通なら彼岸底という言葉を聞くのであるが、いっこうにそのような声を聞かない。

◇…二万四千円攻防を言っていた人たちは、二万三千円の攻防―と、水準を千円切り下げている。

攻防というのは攻めたり守ったりを言うのであるが、今の小豆戦線は売り方の攻めはあっても買い方の防はない。だから攻防ではなく攻攻である。

◇…昨今、ベトナム軍がバンコクを侵攻する可能性が強いと言われる。

情報の早い華僑は、タイへの投資をストップしたそうだ。カンボジアは食糧不足が深刻である。カンボジア人がタイ国に四、五十万人以上も流れ込むだろうと観測されている。タイ国は一望千里、まったく平らな国である。だから〝タイラんど〟というのかどうか知らぬが、戦争の経験を重ねてきたベトナム軍とタイ国の軍隊とでは勝負にならぬ。

◇…いや、二万三千円の攻防じゃなく、売り方は、攻め攻めであるという小豆の強弱が、とんでもない方に飛び火したが、ベトナムがタイ国に攻め込めば、ゴムの相場が沸騰するだろうと考えるのが先物市場の投機家思考である。

◇…砂糖だって、相場がありそうだぜ―という。これはベトナムに関係はない。発想を聞けば、なんだとなるが、小豆が安い時は砂糖が上がり、砂糖が安い時は小豆が高いという過去の経験にもよるが、そんな事ではなく、外糖の動きが違う。国際商品高の最後にくるのが砂糖である。為替の関係。ロンドン、NY市場の投機筋の動きなど、今年の暮から来年にかけて砂糖に大相場ありという見方が色濃くなっている。

◇…話はまた飛ぶが、先週(9/22増大号)の東洋経済新報の「建国30年―中国近代化路線のゆくえ」を読んで毛沢東が中国を駄目にしてしまい、鄧小平さんの手で、中国を立直すことは難かしい。いまや中国内部は失業者と食糧不足と、人材不足で、ガタガタになっている事が判る。

このような時に為政者は国民の目を対外に向けさせ戦争という事になるのだが、時事通信社の森永和彦氏が「内外情勢資料国際特報」に、インドシナ情勢のきわめて流動的なことを書いていた。先日、森永氏は名古屋岡地で講演した時も、中越紛争についてのくわしい解説をされたが、世の中刻々と変動している様子が黒板からもうかがえよう。

●編集部註
 結局ベトナムがタイに乗り込んでくることもなかったし、政治闘争を生き抜き、この時3度目の政治的な復活を遂げた鄧小平は「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫だ」と現在の中国の勃興の土台を築き上げた。 

国際情勢の分析というものは、実に難しい。