昭和の風林史(昭和五四年八月七日掲載分)

先を急ぐ相場 あとは新値新値と

小豆相場は先をいそぎだした。踏むに踏めない連発S高の可能性も濃い。夏休みは返上。

「おいてきし子ほどに遠き蝉のあり 汀女」

もう少し押すのかと思っていたら、産地の天候が待ってくれず、作況も、やや不良に落ち込み、週明けはストップ高に買われ、売り方の心胆を寒からしめた。

小豆の線型は、目先下値ありだったが、その線型を、産地の天候がひっくり返してしまった。天候相場はこれだから怖い。

さて、こうなると、アンドロメダ行き三万六千円の大疾走となるわけだ。

行く先は決まっていたのだから、ついていくだけである。

下値ありの予測で、その押し目を取りに上手した玉は、一発で捕まった。

この場合、新値抜けは踏む覚悟で上手したのだから、値頃にかかわらず売りのカードは手放すのが本手だ。

ストップ高で、踏むに踏めないし、踏めるところでは、かなりの高値である。しかし、相場は待ってくれない。

安値を売ったまま辛抱していた人は、年貢の納め時にきている。

小豆の作柄にとって最も大切な時期のお天気がまったくソッポをむいてしまったのだから三万円相場は自然のコースになる。

不作、凶作なら輸入ワクが拡大されるだろうが、それは、まだ先の事で、それまでの間、市場の場勘戦争は熾烈をきわめる。

先限引き継ぎ線で、この春の高値を買い切ってしまうのは見えているが、先限二万八千円抜けからが、褌を締めてかかる相場になる。目の色が変わらなければ嘘である。

弱気の病気にかかったままの人は、種々の希望的観測を持って、不安な気持ちをまぎらすところだが、この相場は(1)買い仕手が煽ったり工作している相場ではない。という事は、ごく自然の成り行きである。(2)相場の日柄が、まだ浅い。(3)三万円以上の値段を、本気で考えている人は、今もって少数派である。(4)冷害凶作相場の怖さというものを知らない人や、忘れた人が多い。
◇…だから、たかだか五千丁(8月限一代)の上げ相場で、おったまげたり、深押し(三干丁ぐらい)を考えたりする。
◇…これから先は、場が引けたらケイ線用紙を上につながなければならない。売っている人にとっては、気の滅入る作業である。

ともかく千円押しを入れきれなかった。という事は、相場は先をいそいでいるのである。

●編集部註
注文伝票が手書きの場合、注文時間順で処理される。ストップで決済注文が難航する事が予想された場合、いの一番で決済伝票を書くか、同枚数の両建てを注文するしかない。

昔、筆者は朝5時30分付で350枚の損切り伝票を書いた事がある。

当然一番に入力されたが、決済に3営業日かかった。