昭和の風林史(昭和五四年八月二日掲載分)

定石なら安い 方針は強気のまま

ちょっと嫌な雲が出ているから舟を沖に出すのを見合わせる―という図で、釣り具の手入れでもすべえ。

「夏山を上り下りの七湯かな 子規」

小豆に嫌な線が出ているから、相場は序盤戦を終わって中盤の戦いに入り、まず下げて、それからどうなるかの様子をうかがうところだ。

玄人筋は、おしなべて深押しありと警戒人気である。

産地天候の回復と、ホクレン筋の売り直し。

あるいは三晶や栗田氏が買っても、相場が鈍い。

そういう〝気味〟を見るのに敏感な玄人筋は、手すかしにして模様眺めである。

一月限の生れは、ああいうところで、可もなし不可もなしであったと思う。

総体に、押し目が入る場所に来ていると見る人が多いから手口は慎重だ。

二千丁押しがあると見る人。千五百丁ぐらいと見る人。千丁までと見る人。

線は、ちょっとしに頭になった。節足が肩下りで段になり、日足も売り線が出ている。

どの程度下げるのかは判らないが、七月27日の高値が天井になることもないし、八月1日の1月限寄りが天井になるまい。

目先の下げを狙う人は、いつでもすぐに、ひと味違えば踏む気で真夏のスリルを味わう。

12限や11限が六千五百円カイ七千円ときてから買っても、アンドロメダ行き夜行列車に十分間に合う。

中盤戦入りだから千丁でも千五百丁でも下げておいて、下げ幅の倍返し三倍返しと、駒を進めていくのかもしれない。

お天気のほうは、予報にある早い秋が心配である。霜一発。その時、市場は動転する。

相場とは、きわめて皮肉にできていて、人様のポケットの中をお見透しだからやりにくい。たいがいの人が強気になりかけると下げたりするが、押し目が入ると待てば、押さずに、もう一段高して、これは違うぞと飛び付けば、その時、初めて深押ししたり。

「当り屋につくより曲り屋に向かえ」は、けだし名言である。お手手が悪いと、絵に書いたようにチャブツク。こればかりは妙というべきか、実に嫌な病気でもある。

なんだか嫌な雲(線)が出てきたから、沖に舟を出すのを見合わせて、風むきを見ているというのが今の図ではなかろうか。

大局方針は、もとよリアンドロメダ行き三万六千円でよいと思う。深押しありやなしや。あってよし、なくてもよしの場面。

●編集部註
 直近、最後の打ち上げ花火相場が登場する前夜の記述としてご記憶に留めておいていただきたい。
 
頭と尻尾はくれてやれというが、目先の上げに何らかのモヤモヤを感じている事が行間から判る。