昭和の風林史(昭和五四年七月十三日掲載分)

買いあるのみ 理由の如何問わず

小豆相場は買い方針でよいと思う。世界的に穀物相場が上昇していく時代である。

「十楽や蕗や茗荷や庵の庭 子規」

第一商品がこの七月二日から開始したコンピューターのオンラインによる全国十三ヵ所(関東地区四ヵ所は九月から)の情報伝達は、店頭に設置されている機械のボタンを押すと提供可能なメニューが出てきて、その中から自分の欲する資料の番号をボタンに叩けばテレビに文字やカラーのグラフがすぐに出てくる。

これは、なかなか便利で、その資料をコピーしたければコピーのボタンを押すとたちまち印刷されて出てくる。

「ほほーう、成程」などと言いながら、いろいろ出してもらううちに、これが欲しくなった。格好の投機家のおもちゃである。

「それで、相場が高くなるのか安くなるのか、そのあたりの指数みたいな傾向のようなものが出てくるボタンはどれですか?」

いや、相場予測は、やっていません。いずれ、取組みや出来高、あるいは需給予測と相場グラフなどによる相関関係のようなデータも提供したいと考えていますし、入江先生(中央学院大学)や、岩田先生(慶応大学)の価格予測理論による価格予測なども組み込めたらなあ―と思っているのですが。

第一商品では14日(土)この情報システム・オンライン・スタートの記念として九ヵ所で相場講演会を行なう。

その会場には、新鋭コンピューターの秘密兵器がひときわ目を引くわけだが商取業界も、いよいよコンピューターによる情報伝達処理の時代に入った感を深くする。

筆者もこの日は第一商品の津支店で、なにか、しゃべらなければならないようにされてしまって、人様の前でしゃべるということは、とにかく苦手で、嫌でかなわん。相場なんか判りっこないのに、それを人前で講演する。これは殺生というものである。まして新鋭コンピューターの前で講演するなど、非常にコッパづかしい限りだから、津支店のほうの講演会場には、あまり来てもらいたくない。要するに、新聞で毎日書いていること以上のことはなにもないのである。

その新聞のほうの強弱だって、小豆の強気方針以外になにもない。

「来る日も、来る日も、相場が高くなるまで、買いだ買いだ―と書く。いいかげん、読者が厭いた時分に、相場様はスルスルと高くなっていることであろう。

●編集部註
昭和54年は、ソニーがウォークマンを発売した年であり、NECがPC―8001を発売した年でもある。

ただ〝パソコン〟が人口に膾炙するまでは、まだあと数年の時間が必要になってくる。