昭和の風林史(昭和五四年七月十二日掲載分)

換物の対象に インフレ再燃必至

今年の秋口からインフレはきつくなるだろう。北海道小豆新穀は格好の換物の対象商品だ。

「夕暮は鮎の腹見る川瀬かな 鬼貫」

三百円でも五百円でも場合によっては七百円でも押したところは買いたい気が充満している小豆の相場だ。

値段で言うと先限の二万二千五百円あたりの買い玉を持ちたい。

そういう値段は、ないかもしれない―と、買い気が募れば、相場様は皮肉だから、ストトンときたりするし、あるかもしれない―と待っていると、逆に高くなって四千円に突っかけたりするだろう。

中二本、9限、10限でも、二万円台が欲しいのは、売り玉を利食いしたい組である。

今から二万円を割るような相場ではない。

仮りに土用の天候がよくて、今年も大豊作らしいとなっても、9限、10限の二万円割れはないだろう。

相場に値頃感は禁物であるけれど、ものには限度というものがある。

相場社会は、ともすれば目先の現象だけを追いかけやすいが、社会現象、経済現象には、必ず大きなワク組み、大きな流れがあって、その中で変化している。

従って、相場の一面だけを見るのではなく、出来るだけ多面的、全面的に観察しなければならない。

諸物価みな高くなろうとしている時である。生産コストも、輸送コストも原油高という突き上げから嫌が応でも上昇せざるを得ない。

それがたとえ小豆であっても、コスト高はまぬがれない。

要するに、今年の秋から冬にかけて、きついインフレ現象が出てくる。お金よりも品物の時代である。

その場合、先物取引されている小豆は、必ず換物の対象になる。

しかも、値段が大底圏である。金利、倉敷を払っても、現物を抱いておけばという投資家は、広い世の中だから、必ず出てくる。

この場合、昭和54年産北海道小豆―が換物の対象になるわけだが、北海道にある昭和53年産、いわゆる古品小豆が、54年産新穀に、どれだけ化けるかという事も、投機家ならば考えることである。

現物を抱く、抱かぬを別にして、先物市場の特色は、換金性である。大量の品物を確実に迅速に換金できることである。

一月限が建てば、インフレ対策としての換物買いが今以上に集中しよう。しかし値段は今の水準で待ってはいない。

●編集部註
 オイルショック以降、先進国は先物市場を整備強化。先物の平準化機能で「資源ナショナリズム」と対峙するためである。

 この頃サダム・フセインがイラクの大統領に就任している。この人物も東西冷戦と異なるこの攻防戦の主役の一人である。