昭和の風林史(昭和五十年五月二八日掲載分)

限界ある上値 不動の売り方針

場は、かなり過熱してきた。売りの急所である。崩れる時はS安。不動の売り方針。

「鮎くれてよらで過行夜半の門 蕪村」

手亡相場の商いがエスカレートしている。踏み玉。新規買い玉。利食い。新規売り。過熱していた。
一種の怨相場である。

売り陣営は声を発しない。

どの地点で積水を千仭の谷に決すが如き攻勢に出るか。息を詰めて満を持す格好だ。

一代足で九月限手亡は三分の二を戻した。

八月限一代足は半円戻しである。

値段の面、日数の面で大きな急所である。

人気面は大衆売りのクロウト買いという傾向が見える。典型的な〝人気の裏〟が出た相場である。

取り組みは増大している。いまもって手亡相場のミステリーが続いている。

戦い勝って油断していた売り方の虚を、買い方は奇襲した格好で、まさしく暁の逆襲に成功した。

こうなってくると、野も山も総悲観だった人気が、大局基調大転換を思わせるほどの変化を見せるから相場は怖い。

ピービーンズを過大視した反動という。

しかしこの相場には限界がある。

買い方仕手が、いかに奮戦しようと①不需要期に入る②梅雨の品質低下③十万俵のピービーンズ圧迫④相場反騰による輸入刺激⑤相場内部要因の変化即ち踏み一巡という現象が発生する。

現在の相場を分析すれば、総弱気の反動。安値売り込み、高値買い玉の整理完了。大取り組みのエネルギー爆発。天災期入り。相場の花である仕手介入。仮需要の力が実供給力を時間的な面で一時的に上回った―というところだ。

そしてその結果は、次なる暴落を背負うことになる。

『お客さんは売ってくるから、上値を残している』と言う。あおの下げ相場のとき、どこまでも買ってくるといわれた大衆筋が、投げて、そして安値を売り込んだ。

相場は、どこまでも皮肉に出来ている。

さて一万二千円台。二空(二ツ目の夜放れ)である日足で新値八本。節足で十本。一発狙いの急所だと思う。場は、かなり沸いている。

崩れる時はS安であろう。

不動の売り方針だ。

●編集部註
大衆が売り、玄人が買うという構図は珍しい。

外務員が一般客から売りの新規注文を取ってくると、露骨に嫌な顔をされた時代を知っている。

普通、素人はカラ売りという概念を知らない。今はネット等で知っている人が多くなったが、初めて仕組みを知った時、目から鱗が落ちたものだ。

【昭和五十年五月二七日小豆十月限大阪一万七八二〇円・一九〇円高/東京一万七八三〇円・一二〇円高】