昭和の風林史(昭和五十年五月二七日掲載分)

暴落の宿命を 背負った相場だ

やみくもに手亡を買いつくと、息を詰めて狙い打ちの場を待っている十字砲火の集中攻撃を受ける。

「掘立の腰掛台や雁皮咲く 道彦」

敢て、ここのところは逆らわないという態度をとっている手亡の売り方である。

その考えの根底は、およそ次の通りだと思う。

①安値で大衆が猛烈に売り込んだ。

②ピービーンズの悪さを一応織り込んだ。

③自律反騰があってもよい日柄だった。

④仕手が介入している。

⑤若い相場でもある。

そこで、市場人気がどう変化するか様子を見る。

安値を売り込んだ筋が踏んでくるだろう。

また、海外のピービーンズ価格の成り行きを見る。六月の輸入状況を、もう少し確かめてみる。

そして六月二日新ポの11月限の生まれを見たい。

どれだけのサヤを買うか。

いうなら、大局は、買うだけ買ったあと再度暴落の連命下にある相場だが。腰が伸びるまで、敢て逆らわない。

その考え方は、戻すところに来ている相場はどのような悪材料があろうと戻す。

そういう場面には①ついて行くか②逆らわずに疲れるまで待つ。

大下げを取ってきた売り方にすれば、心のゆとりと資力のゆとりがある。

三猿金泉録に「売買をせかず急がず待つは仁、徳の乗るまで待つも仁」というのがある。

なあに、少々産地の天候が悪かろうと、手亡の作付け面積が減少しようと仕手筋が、いかに買おうとこの相場の行き着く先はピービーンズの圧迫である。

過去に、ピービーンズに手を出した仕手は、すべて壊滅している事を思えば、ここで買い方仕手筋が、のめり込むほど、売り方にとって手応えのある大物釣りになる。

もうしばらくすると梅雨入りだ。意外に品質がよい―と言われるピービーンズが梅雨を越したあと、タライまわしにされだすと手垢によごれて、ヨレヨレになる。

その時、すでに相場は崩れ落ちていよう。

小豆相場は目下のところ人気を手亡に奪われて商いが薄い。商いは薄いが、行く行くは小豆が相場の主流になるだろう。

当面は、手亡の沸いたところ、噴いたところを売り狙う。

●編集部注
 これは後から判る事だが、この時の小豆相場は五月から七月まで登り、そこから十月まで下り、そこから、昇龍の如く上がっていく。それは、十五から十六年前の東京金相場の動きに似ている。

【昭和五十年五月二六日小豆十月限大阪一万七六三〇円・五〇円高/東京一万七六一〇円・一〇円安】