昭和の風林史(昭和五十年四月二五日掲載分)

寂然と声なく 落花紅雨の如し

手亡は下値を残している。買い方慙愧の整理場面に移る。市場は閑になるだろう。

「ふり出でし雨の水輪やさざえ桶 茅代子」

新しい局面で下げに入った相場が小さく戻す。戻したあと、また新安値に突っ込んでいく。

戻すのは売り方の利食いと値ごろ感の新規買いが入るからだ。

苦労とは、この戻りの地合いを重視する。勢いがあるか、それとも鈍いか。

鈍い戻しなら、すかさず売り直す。

手亡の線型は大放れである。左右同型中央に手ありというのは囲碁の格言であったと思うが、手亡の線型は四日・七日の中央点を頭にして「山」の字型の左右同型だったのが下放れした。という事は、買い方という買い方、全部水漬かりで追証に攻められていることになる。

しかもその買い玉は辛抱の仕甲斐のないものだけに精神的に苦しい。

どこまで手亡は下がるかという質問。

そういうことは判らないけれど、予想としては一万一千円を(先限)割ったあたりで反発しよう。

一万一千円を中心に横にジグザグぬう場面と、戻りを再び売られ、ジリ貧で一万五百円あたりを付けるか。

いま、手亡はいずれ四ケタ九千円台の相場になるだろうという声を聞くがそれは随分時間をかけてからの事かもしれない。

買い方が受けたピービーンズをどうするか。海外白系豆の値崩れ傾向。来期ワク見合いの輸入契約。九・十月に集中する売りヘッジ。不需要期に向かう。大衆投機家筋がほぼ全滅した。穀物市場の畠が荒れ果てている。

しかも自分で投げきれない因果玉。これは業者が介錯してあげるか、日柄をかけて納会、納会にお葬式を出してあげるしかない。

ともかく筆者の線型では五月限手亡一万二百五十円あたりが算出される。

先限が千円を割ったら一応は止まると見るものも、三千円→二千円→千円と、この限月は大台三ツ替わりの節(ふし)になるからだ。

日柄の面からいうと五月一日、二日の連休前に最悪場面を露呈しそう。

今となって買い方寂(せき)として声も無い。

市場は閑になっていくだろう。唐詩風にいえば「日まさに暮れんとして桃花乱落。紅雨の如くなる」―。買い方慙愧濁酒の盃。

●編集部註
 酒の詩と言えば詩仙李白。彼の酒の詩は陽気だ。

 一方、詩聖杜甫にも酒の詩はある。ただ暗い感じがする。今回出てきた慙愧の酒は、どちらかというと杜甫的な世界か。

【昭和五十年四月二四日小豆九月限大阪一万六九七〇円・七〇円高/東京一万六九五〇円・二〇円高】