昭和の風林史(昭和五十年四月二三日掲載分)

時間の問題だ 手亡相場の崩壊

手亡の買い方は、まったく分のない戦いである。徒労というべきか。キッカケ一ツで総崩れしよう。

「菜の花の野末に低し天王寺 子規」

手亡の期近限月は納会接近に伴って仕手戦の様相を深めている。

しかし、この買い方の姿勢は、誰の目にも大勢に逆らった、いわば意地買いとしか映らない。

相場金言に〝意地商い皆向かえ〟というのがある。

買い方にすれば青葉しげる桜井の里のわたりの夕まぐれ、木の下蔭に駒止めて世の行末をつくづくと、しのぶ鎧の袖のへに散るは涙かはた露か―の心境であろう。

須磨と明石の浦伝ひ敵の旗のみ打ち靡く、吹く松風か白波か寄せくる浪か松風か響き響きて聞ゆなり鼓の音に閧の声―。

ピービーンズが十二㌦を割ったという事は、手亡相場がここまで水準を下げても、まだ輸入して(つなげば)儲かるわけで、期近限月の陽動作戦で、少しでも期先限月が戻せば、売って妙味がある。

いうなら盛りのよい売り場というわけだ。

ケイ線の姿からいうと売れないと言う。

しかし、この線型は、放れ(垂れ込み)を内に秘めている。きっかけ一ツで黒い糸がスーイと落ちてS安。次の日、下放れての陰線引け。大出来高という場面が予測出来る。

要は崩れのきっかけである。

ガップリと取り組んでしまっただけに、かなりのショックを与えなければ、ほどけないかもしれないが、俵の重味と日柄で買い方力尽きるあたり、今月の納会後でなかろうか。

大逆ザヤにして納会を受け、仮りに高納会であったところで、それは無駄な抵抗だし徒労である。

まして、各地の買い場は同病相憐れむ姿とはいえ、トランプの婆を誰かに掴まして自分は逃げたい。連合体の仕手は、その運命として最後は抜け駆け、裏切りがつきものだ。

今の買い方陣営に連合が出来ているのかどうか知らないが、素人が高い現物を受けて、落ちゆく先は、過去の手亡仕手戦で嫌というほど見てきた。

まして、持ち下げならぬピービーンズを抱いて、金利、倉敷料を計算すれば、まったく分のない戦いである。

ここに来て小豆相場もしめりがち。

期先限月の一万六千八百円以下がありそうだ。軽く売って取れそう。

●編集部註
 売れない相場は弱い。

 売るにも勇気がいる。

 ある売り方は、鵯越逆落としの掛け軸をかけて売り勝負に臨んだという。

【昭和五十年四月二二日小豆九月限大阪一万六九九〇円・一三〇円安/東京一万七〇〇〇円・一三〇円安】