昭和の風林史(昭和五十年四月二二日掲載分)

下り最終列車 売って間に合う

手亡相場は、まだ売って間に合う終列車。一万五百円あたり見え見えだ。小豆も軟化場面。

「うどの香や雨夜小暗き流しもと 五洲」

もともと悪い手亡相場が戻すから、よけい悪くなって、下値の深さが思いやられる。

どのくらいの深さがあるのか、恐る恐る井戸の中を覗き込むような感じで、これは深いぞ―と、水のにおいに身が引き締まる。

手亡八、九月限、下げ幅の半値を戻しきれなかった。

現物受けの姿勢と期近限月会で陽動した買い方だが衆寡敵せずという感じだ。

予想される下値は、一万五、七百円どころ。

結局はピービーンズ相場に成りさがるわけだ。

極端な弱気筋は、来月あたり、今の手亡相場は一万円大台を割って四ケタ相場になるだろうと言う。

それもこれも、手亡相場が手亡相場でないからだ。

ここにきて、20万枚をオーバーした大取り組みが、アルプスの雪解けでなだれ現象をおこしそうだ。

あまりにも手亡相場もそのものの悪さを知らなさすぎる大衆買いである。

すすめられて買った。値ごろ感で買った。天候相場を期待して買った。減反予想で買った。

そして両建てになった人。

ナンピンをかけている人。

見ていて無残である。ここから千円ないし千五百円崩れて、崩れっぱなしの限月になることが見え見えなのに、投げきれない。見切る事が出来ない。ましてドテン売りなど、とてもの事でない。

人情からめば…という歌がある。人情からめば抱き合い心中。未練からめば、倉・屋敷も飛ぶ。

『無駄な抵抗はやめよ』とマイクでやっていたことがある。そう言われれば言われるほど人間というもの抵抗したくなるものだ。

『今からでも遅くない』というのは有名な言葉だ。売って間に合う終列車。

小豆相場にも影響をもたらす。

小豆相場に対しては、手亡を今売っているクロウト筋にしても、先に行って買わねばならない相場だと見ているが、いま少し早い。

出来たら九月限の一万六千五、七百円あたりの値段を買いたい。

手亡崩れで儲けた資金の持って行き場といえばこの安くなった小豆買いしかないのだ。

小豆の崩れたあたり、ゆっくり拾う。

●編集部註
大多数が売りと見て、動いていない時は下がるが、実際に動いている人が多い時は下がらない。

逆もまた、真なり。

【昭和五十年四月二一日小豆九月限大阪一万七一二〇円・一七〇円安/東京一万七一三〇円・一七〇円安】