昭和の風林史(昭和五十年三月十四日掲載分)

手亡が悪役に 崩れれば小豆も

手亡の大取り組みが投げてくるようだと凄惨な市場になる。小豆も影響を受けるだろう。

「春更けて諸鳥啼くや雲の上 普羅」

注目されている事は、大きな手亡の取り組み、これは大衆筋の買いであるが、ピービーンズの圧迫で軟化する相場に、買い方が、どこまで耐えられるかである。

実勢悪で、大衆が総投げしてきた場合、凄惨(せいさん)な崩壊が展開されるかもしれないが、大衆が投げずに、両建て戦法に出てくれば、取り組みはなお大きくなる。

ただ、ここのところ手亡の新穀は消費地に、ほとんど入荷していない。

新穀手亡一万俵。ピービーンズ一万俵という極めて品薄の市場で、強力な買い物が潜行して、納会受けに出れば、手亡の三月限でも、四月限でも、予想外の高値を出す可能性を有するのだ。

もとより新穀手亡の入荷は着々と進むであろうし、六月以降はピービーンズのつなぎものが待機している。

そういうことから、手亡の大きな取り組みが暴落によって整理されるところが、あるかもしれないという事を考えなければならない。

手亡が崩れたら、小豆にも影響してこよう。

作付けの大幅減反とか、天候相場接近とはいうものの、市場要因、市場人気が軟弱では、買い方、楽観は禁物。

東京都知事の美濃部さんは陶淵明の帰去来の辞の一節「帰りなんいざ田園まさに蕪せんとす、なんぞ帰らざる」と出馬とりやめの時にその心境を語った。

手亡相場も安値に帰りなんいざ市場まさに荒れんとす、なんぞ買えようぞ―という風情だ。

帰去来の辞は「既に自ら心を以て形の役と為す、なんぞ惆悵として独り悲しまん、已(い)往の諫められざるを悟り来者の追うべきを知る、まことに途に迷ふこと其れ未だ遠からず―」とこの詩は、まだまだ続く。

すでに手亡八月限は生まれた値から千円棒を入れた。一万三千円割れなしとしない地合いだ。

ピービーンズの換算を簡単にしてみると

一〇〇ポンドは四五・三六kg

一㌦を二八五円として、12㌦70㌣のピービーンズは一〇〇ポンド二八〇㌦。即ち七万九千八百円。運賃二万二千八百円。関税一万二百六十円。調整金と諸掛かり三万三千六十円。トン当たり十四万五千九百二十円。一俵60kg当たり八千七百五十五円。改装費四百五十円。定期格差二千五百円で一万一千七百五円になる。

●編集部注
小豆相場は、三月十日の月曜からジリジリと下げ模様。買い方の胃をキリキリと痛めていく。

【昭和五十年三月十三日小豆八月限大阪一万七二六〇円・九〇円安/東京一万七二六〇円・一八〇円安】