昭和の風林史(昭和五十年三月十一日掲載分)

手亡期近危険 新穀入荷微量で

新穀の入荷が、まったく少ない手亡相場の前三本が時によると爆発するかもしれない。

「渡御前の鹿追うてゐる舎人かな 橙青」

丸五商事の講演会で同社の伊藤徳三社長は『三月、四月、小豆相場は、まだまだ走り出す環境ではない。もとより先行きの値段は、高くなっていくだろうが、自分の買っている限月が騰がるのではなく、新ポ、新ポ、サヤで高くなるのだから、相場の居所は変わると申してもそのこのところを良く考えて欲しい。目先的には一万七千五百円あたりから軽く売ってもよいと思う』―。

また手亡については『手亡の将来は悪役のピービーンズ圧迫ということになろう。最終的に一体誰が受けるのか。現在言われていることは、十六万枚という大取組の中の僅かなピービーンズは、それほど気にする必要はないというが、冗談ではない。ピービーンズをどこで打ち切るか?。10月か、それとも12月か。今の格差二千五百円。一万三千八百円からこれを引いて一万一千三百円。誰が一万一千三百円のピービーンズを受けましょう』。

『しかし、手亡の新穀入荷は全消費地で現在一万俵しかない。ピービーンズ一万俵として、今来月は、さあ受けましょうという筋が出現したら、これは大変な事になる。私のところで手持ちしている新の手亡は、今月は渡さない。来月、名古屋に持っていく。名古屋の城を固めるのです。だから大阪と東京はアキ屋になる。手亡の三月限が無事なら四月限、五月限に全神経を配らなければならない。もちろんこれから新穀手亡は徐々に入荷してくるでしょうが、刻々移る数字に注意して欲しい』―と。

伊藤徳三氏は『黒板に書いていない限月(今なら九・十・十一月限のこと)を考えよ』―という。

筆者は『小豆相場で億の金を掴もう』という題であった。伊藤さんは、億の金は、ちょっとや、そっとでは掴めない―と安易な考えをいましめた。

左様。当てづっぽや単なるケイ線張りでは億の金は握れない。厳密な需給の数字、的確な将来の読みが必要である。

数字、数字、数字―。伊藤氏は数字を追えと言った。そして億の金を掴むなら〝伊藤道場〟で修業してくださいと商売のほうも忘れない。

さて、相場のほうはどうなるか。手亡の四、五月限狙い。小豆の先限買いが妙味大。

●編集部註
 相場の動きをどう見るかは千差万別。罫線で見る人もいれば、場帳で数字を追いかける人もいる。

 前者がアナログ的、後者がデジタル的な相場の見方といえよう。

【昭和五十年三月十日小豆八月限大阪一万七千四百九十円・八〇円高/東京一万七千五百五十円・七〇円高】