昭和の風林史(昭和五十年三月十日掲載分)

大器晩成型か 芯の疲れる相場

これは感じであるが、出発、発進が近い―というものを感じる。大器晩成型かもしれないが。

「ギヤマンの如く豪華に陽炎へる 茅舎」

黒板も弱い、話しする相手も弱い―というふうに先週末の相場は買い方お疲れ気味だった。

山大商事の杉山重光社長は『この半年あまり強気してきた人たちが、ふらふらにされた相場だが、ここからだよ強気するのは』『ケイ線の姿のがいいじゃないか、ほれぼれするよ』―と元帥いよいよ御出陣の構え。

同社の関口明営業部長は『48年産小豆の圧迫感が薄らいできた。売れない売れないの二月が案外売れていた。ホクレン・ダイレクトものがさばけていた。すそものの荷動きが、ようやく見られだした。いままでの強気筋が先限を買いきれない市場人気になっている。移出検査数字が極端に少ない。農家の売り腰は意外に強い。お正月の商談会で契約した三月積みの荷が十勝でなかなか集めにくい。手亡の下落で小豆の人気も冷えたが、シカゴ穀物相場が底入れ気味でピービーンズも反発しよう。六月入荷、八月ヘッジのピービーンズ背景の売り玉は、ひとまず利食いに入った。手亡の大取り組みは売り型にとっても、これから先は火薬を抱いているようなものだ。

まあ、そういうことで、これからが小豆の本番。七千五百円どころはホクレンの売りものを警戒する市場だが、八千円カイとくればホクレン筋の心理的微妙な変化が相場に反映しよう』。

薄商いのところにパラ、パラとホクレンの現物裏付けの売り物が出ると、やはり買い方は嫌な感じを受けるものだ。

今まで強気を通してきた人たちも、つい手亡の先限などの地合いにつられて売ってみたりする。その売り玉が、一、二日もせぬうちに、ものの二、三百円引かされるということは、人気の面でも陰の極。相場の上でも〝いいところ〟に来ていると思う。

『なんだい紙面に元気がないじゃないか』と元帥はいう。相場同様お疲れさんである。持久戦の構えでいかないと芯が疲れる。

出たら大きい相場と知りながら、今出るか、今出るかと手に汗握って息を詰めているところに、お隣さんがピー崩れしては、がっくりくるのである。いや、気を取り直して、ほどけたゼンマイねじを、キリキリ巻きあげなければならない。

●編集部註
 読んでみて、当時の常識に新鮮な驚きを感じる。

 黒板なのだ。電光掲示板でもなく、PCモニタでもなく、黒板なのだ。 十三年前、福岡のある商品取引員の相場表はマグネットであったが…。

【昭和五十年三月八日小豆八月限大阪一万七四一〇円・六〇円安/東京一万七四八〇円・三〇円高】