昭和の風林史(昭和五十年三月五日掲載分)

下値深くない のたりのたりか

少々悪い地合いでも奈落の底に惨落するという相場ではない。鮮烈な上昇もすぐには望めないが。

「さるかたにさる人すめるおぼろかな 万太郎」

三日新ポは大荒れというジンクスが出来そうな相場だ。ミシガンピービーンズの価格が崩れたことや、新ポの先限生まれが天災期限月なのに精気を欠いたことなど相場巧者の芽に、相場の重さを感じさせ、手亡が売られた。

手亡は、証拠金の手ごろさで大衆の人気を集め先高期待感で取り組みも小豆を大幅に上回った。

しかし、現物事情に通じた有力筋の、ピービーンズを背景にした売り叩きにあって、大衆買いが狙われた格好である。

勝負は、なにがなんでも勝たねばならない。

それは相場についても言えよう。

大衆即ち烏合の衆。時にはその結集した力が威力を発揮するときもあるが〝相場は人気の裏を行く〟という言葉もあって、裏目になることも多い。

今度の場合など、大衆買いが、まんまと売り方の餌食になった格好である。

新ポ、東京、名古屋市場ではS安限月も出て春雷を感じさせたが、さてそれでは一万四千円の手亡を弱気して、果たしてどれだけの下値が考えられるのだろうか。

市場の強気陣営は月初からの叩き込みで自信を失いかけているが、この時、小豆相場を見ると、下値がきわめて頑強である。

小豆は二月6日を頭にして二月中八百円あまりを下げてきたわけだが、値段としてはそれ以下のものではない。確かに、いま、この相場が目の醒めるような鮮烈な動きをすることはないであろうが、反対に奈落の底に惨落していくこともない。

あれほどの不況金詰まりの時期でさえ、小豆相場は一万六千円を割り込んで大暴落する事がなかった。

いま環境は徐々に好転している。金融はゆるみ、そして需要最盛期入りだ。また、悪役の二月限が落ち天候相場は接近している。

しかも本年の天候こそ投機家千載一遇の勝負年と見られ、さらに作付けの大幅減反という支えさえあるのだ。

この時、仮りに手亡がS安しようと小豆が軟化しようと、大なる希望を持つものは、投機スケジュールに乗って所期の方針を一貫することである。

●編集部注
先日、日本商品委託者保護基金から十年史を戴いた。その中の年表「経済社会と商品先物業界のあゆみ」が非常に面白い。

昭和五十年三月には「景気の谷」「商品取引員有志、日本貴金属取引協会設立」という記述があった。

【昭和五十年三月四日小豆八月限大阪一万七一二〇円・四〇円高/東京一万七一一〇円・一〇円高】